Archive for 30 May 2006
30 May
【私的考察】なぜ北陸にギフチョウが多いのか?
何だかダイレクトメール(郵便)で、ワインか何かのマーケティング調査のアンケート依頼が入っていましたが・・・。それを下戸に聞いてどうする。
私ぁ、自宅にアルコールが常備されて「いない」ほどの下戸なんで、ワインなんて余程気分が良い時しか飲みませんが?
しかも、アンケートに協力した景品として(抽選で)もらえるのが、多機能ポケットナイフ、つまりスイスアーミーナイフな訳ですが・・・。
そんなもん、もう持ってるがな。(しかも、数タイプ ^^;)
ハイカーにそんな物を「特別なプレゼントです」と言われてもねえ・・・(日用品ですって)。
では本題です。
以前、『「春の女神」ことギフチョウを巡るアレやコレ。』(4/10日付)という記事を上げた所、個別の記事としての参照数が過去最高を記録しました。
この、「春の女神」とも呼ばれる可憐な蝶は、現在全国的に・・・といっても、もともと本州の中部以西と四国にしか(主に)生息していませんが・・・ま、とにかく生息環境の悪化などに伴い、減少中であるといわれています(が、実際、科学的かつ統計的な調査が行われている地域は意外に少なく、単なる感情論で"減った"と言われている場合も多い。また、某県では冬期オリンピックの誘致のために生息地をぶっ潰してジャンプ台にしておきながら、数の減少を採取者のせいにしている地域もある)。
ところが、今年の5月の連休中、故郷福井の生息地を訪れた時、裏山程度のハイキングコースを歩行中、「もうええわ!」と言いたくなるほど沢山の個体に出会いました。
ちなみにこれは、その場所が特別な場所なのではなく、北陸の低山〜亜高山域では、同じように多数の個体が舞う良好な生息地が、あちこちに残されているそうです。
なお、近年、全国的にギフチョウの数が減っているのは、里山地域の荒廃や、放棄された人工林が地域の生態系に対して悪影響を及ぼしているから、と一般に言われています。
その傾向は北陸も例外ではなく、一昨年の秋に起きた「クマ・ラッシュ!」も、里山地域の崩壊が遠因として挙げられていたのは、皆様の記憶に新しいことでしょう。
しかし、それでも他地域と比べると、格段に良好なギフチョウの生息環境が残っている理由は何なのか・・・という事を私的に考えてみますと・・・。
恐らくこれは、北陸独特の気候と、食草であるカンアオイの良好な生育条件とが奇妙な符号を見せているからではないか、と思います。
カンアオイは、生育範囲が1km移動するのに1万年かかる弱い植物だ、などと言われる事がありますが、実際にはそれは何かを誤解しているとしか思えません。
それが証拠に、関東でも、それまでほとんどカンアオイの姿を見かけなかった深い樹林内で倒木が発生すると、次の年の早春期には、そこに新しい株がまとまって生えている、なんて風景を良く見かけるなど、実際にはかなりたくましい植物です。
暗い林内ではヒョロヒョロしていても、ひとたび日光を受けられれば、埋もれている種が目覚め、丈夫な株が育ってくるのです。
そして北陸地方の気候を見ると、特に冬の積雪によって、このカンアオイの生育に良好な環境が保たれる事が考えられます。
いくつか要因を挙げると、
1.北陸の雪は水分が多くて重く、圧雪倒木や雪の重みによる大枝折れがある程度の割合で発生する。
→冬季〜春先の、カンアオイの発生期に林床まで日光が届くような環境が発生しやすい。
2.冬期は積雪により多年生の高茎草本類が圧迫され、それほど大規模なコロニーを作れない。
→競争相手がうまい具合に間引かれている。
3.雪崩などにより、前年の倒木や落枝などの障害物が取り除かれやすい。
→地表まで効率よく日光が回る環境が保たれる。
という事が考えられます。
つまり、ほんのちょっとした偶然と幸運によって、ギフチョウが生息しやすいバランスの気候帯がそこに存在するということ。
そして、これまた偶然に北陸は「田舎」を絵に描いたような土地(出身者だから言えること ^^;)で、開発も進んでおらず、多数の個体の生息を支える環境のポテンシャルが十分にあるということ。
これらの要因が微妙なバランスで均衡を保っている事が、北陸という地域を、マニアをして「ギフチョウ天国」と呼ばせる地域にしているのでしょう。
しかし、今は確かに十分な数が生息していても、ギフチョウは里山という、ヒトが介入する事で保たれる環境に依存する種です。
このまま里山の荒廃が進めば、「天国」もいずれ「荒野」に変わってしまうかもしれません。
23:40:28 |
yo-ta |
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