Archive for 06 October 2004

06 October

私の、山での遭難体験 Part 1 -この道は違う、と気付くまで-

 そろそろ、紅葉登山シーズンがやってきました。

 自慢できるような事ではないですが、低山ハイキングなんて趣味を持っていると、つまづいてコケた程度のものから、ひょっとするとヤバいかも、というものまで、色んな遭難事故を体験できてしまうものです。
 そのうちのひとつを、自らの教訓含めて、さらしあげしておきたいと思います。

 それは去年の12月の頭、奥多摩の鷹ノ巣山から、奥多摩湖近くの水根という集落に向かって下山中の出来事でした。
 この時辿ったルートは、私にとって初めてのルートでしたが、それほど危険なものではなく、普通に注意していれば、何事もなく通過できるような道だったはずです。
 そんな場所で、私は道迷いから冷静さを失い、今考えると、ちょっとヤバかったかもしれない、という状態に追い込まれてしまったのです。

 私は写真を撮りながら歩くため、自分のペースを守りたいこともあって、望んで単独で歩くことが多く、この日も一人で山を歩いていました。

 鷹ノ巣山から水根集落への下山路は、最初は見晴らしのいい尾根筋を辿り、そのうち、沢沿いの道に向かう分岐を曲り、薄暗いスギの人工林内を下って行きます。
 私はスギやヒノキの人工樹林の中は、あまり好きではありません。花粉症だから・・・ということもありますが、ほとんど下生えもなく、どこまでも似たような形、大きさ、太さの木が続いているため、景色が単調で退屈だからです。
 その時、道迷いに陥ったのも、そういった単純な風景の繰り返しの中で注意が散漫になり、間違った方向に進んだことにさえ気付かなかったためだと思います。

 しばらくして気がつくと、私の前の地面を埋め尽くす枯れた杉の葉が、ほとんど原型を保ったままになっている事に気付きました。
 一般の登山道であれば、いくら微生物に分解されにくい針葉樹の葉とはいえ、人が歩く道筋くらいは、プレスされたように潰れて、道筋がわかるようになっているものです。
 「おかしいな?道を逸れた覚えはないのに。冬の谷道は寒いから、今の季節は歩く人も少ないからかな?」などとと思いつつ先に進むと、やがて人工樹林は切れ、落葉広葉樹林に出ました。
 その林床に、人が一人くらい歩けるような踏み跡(小さな道筋)があり、やっぱりこの道で良かったのか、と安心して前に進みます。
 しかし、そのうち踏み跡は急に狭くなったり切れ切れになったりしはじめます。
 再び本当に大丈夫なのか焦り始めた頃、腐食してボロボロの、よじ登らないと通れないほど巨大な倒木が道を塞いでいる場所に行き当たりました。

 いや、この倒木、単に腐食しているという状態ではありませんでした。
 樹木本体は、道の上の斜面から根こそぎ倒れ込み、一度は道の上に覆いかぶさるブリッジ状になったものの、長年の間に腐食して強度が落ち、折れて地面に突き刺さっている、という状態でした。
 幹の太さは、樹皮や表層部まで残っていれば、ゆうに数十センチはあろうかという大木です。それが、どう考えても10年は放置されていた、というぐらいのボロボロになっているのです。

 ここに来て、やっと私は確信します。
 こんな巨大な倒木がボロボロになるまで放置されるのは、一般登山道にはありえないことで、つまり私は道を間違え、迷ったのだと。
 そして、初めてのルートで道迷いをした、ということを意識して初めて、自分の中から言い様のない焦燥と恐怖がわき上がってきました。

 ・・・この続きは、また明日、更新します。

23:22:10 | yo-ta | | TrackBacks