Archive for January 2005

30 January

山で出会った動物(哺乳類)の記録 Part 2 アカネズミ

 二回目にして、いきなり地味な動物になります(笑)。
 早くもネタに困っているわけではありませんので、ご安心ください(^^;)。

 ネズミといっても、アカネズミは森林や草原に生息していて、人家周辺は嫌う傾向がある種類です。
 ネズミというと、多くの皆様には敬遠されがちですが、デカくてアホなドブネズミ(全力疾走で逃げようとして、壁に激突した個体を見たことがある)ならともかく、この種は目がクリクリっとした、かわいい顔立ちをしています。

 このアカネズミには、高尾山で出会いました。
 秋も深まった頃、自然研究路一号路から少し逸れた、今は使われていない展望台の東屋で休んでいると、周囲の笹藪から、カサカサ、カサカサ、という音が聞こえてきました。
 少しずつ近付いているようだったので、何が出てくるのか見てやろう、と思い、じっと息を殺していました。
 すると、ササの間にカンガルーのようにビョンビョン飛び跳ねている、小さな影が見えてきます。
 その特徴的な動きから、アカネズミだとわかりました(アカネズミは後脚の跳躍力が強く、カンガルーのように飛び跳ねながら移動するため)。

 なお、このアカネズミについて、以前、自然環境調査員をやっている女性に、「アカネズミに唇を奪われた」という経験談を聞かせていただいたことがあります。

 自然環境調査では、ネズミ類を捕獲するのに「シャーマントラップ」という、跳ね蓋つきの箱罠を使います。
 以前は、ネズミの罠と言えば、弾き罠(バネでぱっちん、と挟んで骨格粉砕するアレ)が普通でしたが、環境調査なのに駆除のごとく殺すのはよろしくない(環境に与える影響が大きい)、ということで、最近は生け捕り罠を使うのが普通だそうです。

 で、その罠が空か当たりかは、一応、蓋が閉じていることでわかりますが、やたら重いなあ、と思ったらヒキガエルだったとか、軽いぞ?と思ったらトカゲだったという事が本当によくあるそうです。
 何が入っているのか、そしてネズミだとしても、どんな種類のネズミがかかっているのかは、蓋を開けないとわかりません。
 そこで、その女性は箱を覗き込むようにしながら蓋を開けたのですが・・・。

 その時、入っていたのが、このアカネズミ。
 しかも、逃げ場を探していたらしいネズミは、出口が開いた瞬間に、跳躍力をいかして、勢いよく飛び上がり・・・勢いあまって、ネズミの鼻先が、覗き込んでいた彼女の唇を直撃!
 うっ!と思った瞬間には、ビョーンビョーンと跳びながら逃げてゆくネズミの背中しか見えなかったそうです。
 今となっては笑い話ですが、純真な乙女(※)である彼女には、しばらく立ち直れない体験だったとか。

 以後、彼女はシャーマントラップを開けるときは、思い切り腕を伸ばして、タコ踊りのような、変な格好をしているそうです。
 作業効率が落ちるから、やめんかい、と、何度言われても、絶対にやめないのだとか・・・。


(※)
 もちろん、これはあくまでも彼女の「自称」!明らかに間違っていると思うが、自称するのは自由だから仕方ない。
 実際には、「きつい、汚い、危険」の三拍子が揃っている環境系業種の世界で第一線にいる人に、「純真な乙女」なんて絶滅危惧IA類(CR)並(わかりやすく言ったら、ニホンカワウソ並)の希少種です。
 ・・・と言ったら、環境系業種の女性の皆様に、グーで殴られるかも?

(※)之弐
 アカネズミ等のノネズミを対象としたトラップ(罠)を仕掛ける行為は、特定の場合を除いて鳥獣保護法に触れます。
 ドブネズミ、クマネズミ、ハツカネズミの駆除は特に制限されていませんが、それ以外のネズミに関しては、捕獲のための許可願い等の届出が必要となります(違反すると、結構キツイ罰則あり・・・)。
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23 January

山で出会った動物(哺乳類)の記録 Part 1 ニホンジカ

 しばらくの間、多忙期のため、あまり顔を出せません。
 せめて週末ごとにはネタを振ろうと思い、今日からは週末は特別企画でお送りします。

 で、その内容というのは、私が奥多摩や裏高尾などの山域を歩いていて、出会った動物(哺乳類)について書いて行きたいと思います。
 何故「表」のメイン被写体の「昆虫」でないのか、というと、そっちは「例を出していたらきりがない」からです(多分、一年365日、虫の話題になりますぞ:笑)。

 とにかく、これからしばらく書いていく動物との遭遇は、全て、東京都内での遭遇体験です。
 東京都内には、まだこんなにたくさんの動物達が生きている、ということを実感していただければと思います。

 前置きが長くなりましたが、第一回目のニホンジカ。
 この動物は、一日あたりの遭遇回数の最高記録を持っている動物です(笑)。
 出合った場所は、奥多摩の鷹ノ巣山、浅間尾根の登山道で、一日に三回も(それぞれ別の個体に)出会っています。

 人工林の中の急斜面を登りきり、落葉広葉樹林に入った段階で、脱兎のごとく逃げた一頭が一回目。
 その先の、クマザサ帯で逃げてゆく小規模な群れを見たので二回目。
 そして、鷹ノ巣山避難小屋前で、登山者に餌をねだりに来ていた個体を見たので三回目。
 この三回、いずれも遭遇距離は目算10m以内という、超至近遭遇でした。

 このニホンジカは、奥多摩の山地では当初、多摩川の北岸(奥多摩湖より北)のみにしか生息していなかったようですが、近年は南岸へと勢力を広げています。
 今では、カタクリの山として知られる&頂上付近の林床の植生が比較的豊かに保たれている御前山(奥多摩湖南東)周辺でも足跡確認の報告があり、植生の単純化や林床の荒廃が危惧されています。

 なお、彼らが勢力を広げているのは、決して奥多摩の環境が良くなっているからではありません。
 奥多摩町北部の長沢背稜や石尾根は、ニホンジカがほとんどの植物を食べ尽くしたと思われるような、植生(特に草本類)の貧困化と単純化が発生しています(いわゆる食害という問題)。
 彼らは餌を食べ尽くし、それでも数が増え続けているため、餌を求めて南へ、南へと移動しているようです。

 近年のニホンジカの爆発的な個体数の増加は、ニホンオオカミの絶滅による天敵の消滅、暖冬の連続による冬季の死亡個体の減少、狩猟禁止措置による過保護などが原因といわれていますが、詳しいことはわかっていません。
 現在、奥多摩町では東京都の主導のもと、これ以上、食害による環境悪化を招かないために、シカの捕獲作戦が展開中です。

 こういう、捕獲作戦には、色々思うところはありますが・・・。
 しかし、この10年ほどで、花畑として知られた石尾根が、シカの食害のために「シカまたぎ」ことマルバダケブキ(微弱な毒性成分を持つため、ものすごく不味い草)以外、ほとんど植物が見られなくなったほどの被害が出ていることを考えると、仕方がないのかもしれません。
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