Archive for February 2005

26 February

山で出会った動物(哺乳類)の記録 Part 6 ニホンザル

 ニホンザルに出会ったのは、「奥多摩むかしみち」の途中。
 水根集落から中山集落に向かう、崖沿いの山道でした。

 春の新緑の撮影のためにそこを歩いていると、頭上から突然、「ギャギャギャ」という声が響き、周囲の木々が派手に揺れました。
 うわ!何だ!と思って見上げると、数匹のニホンザルが慌てて逃げてゆく姿が見られました。
 こんな場所まで下りてくるのか、とちょっとびっくりしましたが、そこは落葉広葉樹の多い場所だけに、餌が豊富にある場所だったのかもしれません。

 あと、ニホンザルは、日原川流域で、崖から転落したのか、岩場に死骸が引っ掛かっているのを見かけました。
 サルも木から落ちる・・・というわけでもないでしょうが、山に精通しているはずの彼らでも、事故を起こして死んでしまうんだ、と思うと、彼らの何分の一か、という程度の生命力しか持っていない「ヒト」という軟弱な動物である私は、遭難事故を起こさないように十分、注意しないといけないんだな、と思わされたりしました。

 そういえば、ニホンザルといえば、違う意味での「日光猿軍団」には、会いたくありませんね。
 奴ら、ヒトのザックを勝手に開いて、中身を持って行きやがるからなぁ・・・。

 ・・・ええと、今週は超忙しいので、ショートバージョンでした・・・。
22:27:00 | yo-ta | | TrackBacks

21 February

屋久島で遭難事故増加。凍死も。

 “南国イメージ”で油断? 屋久島登山で事故増加(ニュース速報のため、2〜3日で飛べなくなります)

 これ、個人的に、すごく気になるニュースです。

 気になるのは、南国の屋久島で凍死・・・という部分ではありません。
 条件が悪い時は、真夏の平地でも凍死(疲労凍死)は起きますから、冬の屋久島で凍死しても、おかしい話ではありません。
 まあ、とにかく、私が気になるのは、何故、この時期に屋久島くらい北方の島に、南国を求めるのか、という部分です。

 屋久島は日本列島では南の方にある島とはいえ、全地球測位系で見れば、相当北方になります。
 そんな場所ですから、アメダスの観測結果を参照すれば、屋久島も、冬には平野部の気温が10℃以下まで落ちることがある場所だとわかります。
 これは、都心部を歩く人が、寒ッ!っと襟を立てる日と大差ありませんよね。

 さらに、屋久島で主に登山対象となる宮之浦岳は2,000mに手が届きそうな標高(1,936m)です。
 2,000mといえば、夏でも当たり前に凍死(疲労凍死)が発生する高度ですから、冬にこんな高さまで上がるなら、南国だろうが油断できない、と、普通の登山者やハイカーなら考えると思いますが・・・何故、そんなに事故が多発するのやら?

 山の世界では常識とされる内容ですが、標高を100m上げれば気温は約0.6℃下がり、さらに体感気温は風速が1m上がるごとに1℃ずつ下がります。
 ちなみに、この風速と体感気温の関係は、服が乾燥した状態での話であり、服が汗などで濡れていたら、さらに悲惨な結果(さらに1〜2℃の体感温度低下)が待っています。

 しかも、今は冬。
 下界で気温10℃の時、単純計算でも2,000mの気温は-2℃。
 で、アメダスデータでは、屋久島では下界でも風速2〜3m程度は当たり前のように吹いていますから、山上条件を考慮すれば風速はさらに倍〜3倍にも強くなり、体感気温は-10℃以下まで落ちることも考えられます。

 さて、これが南国装備で対応可能な環境といえるでしょうか?
 アメダスの観測データを探っていくと、-10℃という気温は、平野部なら東北地方北部まで北上しないといけない気温(しかも、それでも早朝などの最も気温が下がる時間帯が、やっとこうなる)と同等です。
 また、ここまで気温が下がる場所ではかなりの積雪も考えられますから、実際に行動する場合は制限要素が多くなることは、ちょっと考えれば想像できます(※)。
 決して油断できない場所であることは、机上理論だけでも十分理解いただけると思います。

 私も、特に秋口に奥多摩の1,000m峰でよく経験しますが、下界は夏日に届きそうな陽気でも、山の上では10℃もない、という極端な気温差は、山の中では当たり前にあることです。
 冬の奥多摩は、低山とはいえ1,000m以上の場所は積雪はメートル単位に達し、気温は氷点下二桁になることもあり、凍傷の症状を訴える登山者もいると聞きます。

 低山だから、とか、(日本国内基準で)南国だから、という漠然としたイメージで判断するのではなく、行先地域の気象条件を把握し、さらにそれをベースに目的地の状況を推測して計画を立てることは、「自分の身を守る上で」基本中の基本だと私は思います。
 気象情報は、アメダスで気温と風向風速をチェックするだけでも全然違うと思います(アメダスデータは気象庁ホームページで参照可能)。
 (ていうか、その山の季節ごとの対処については、普通、山のガイドブックに載ってますけどね・・・)

(※)積雪があると、行動が制限される。
 雪国生まれなのでよく経験していますが、普通に歩ける積雪深は、足首までが限界です。
 足が膝まで雪に潜ると、それを引き抜くのも一苦労ですし、歩行速度は無雪状態の半分以下に落ちます。
 ちなみに、そういう場所で本当に「はまる」と、下半身がロックされて身動きがとれなくなり、何とかしようともがくと、さらに「どつぼ」にはまることが良くありました(数人がかりで引き抜いてもらったり、「アザラシ」で脱出したこともあったっけ・・・)。
23:14:00 | yo-ta | | TrackBacks

12 February

山で出会った動物(哺乳類)の記録 Part 4 ニホンカモシカ

 カモシカ、というからにはシカに近い仲間かと思っている皆様も多いと思いますが、ニホンカモシカは、実はウシに近い動物です。
 一時は乱獲のために数が減ったといわれ、国の特別天然記念物の指定を受けて保護されましたが、現在は逆に増えすぎた、とも言われています。

 このニホンカモシカとの出会いは、日原林道でした。

 日原林道は、奥多摩でもかなり山深い場所にある林道で、谷は深くて斜面は急峻、という厄介な地形に通っています。
 おかげで、というか、今でも落石が当たり前のようにゴロゴロ落ちてくる場所があります。
 しかし、この道沿いはほとんど人の手がついていない山林も(特に対岸には)多く見られ、様々な生物が生息する環境として、都内レベルで見れば、かなり良好な場所と言えるでしょう。

 ニホンカモシカには、この道沿いで、夏の暑い日に、タテハチョウや山林生アゲハチョウが給水に来る姿を写真に撮ろうと、崖線の湧水の前で待ち伏せしている時に出会いました。
 一時間ほどじっと待った頃、崖の上の方で、カツ、カツ、という音がしたので、何だ?と思って見上げたら、10mほど斜面を登った上の場所で、このニホンカモシカが、同じように「何だ?」という目でこちらを見下ろしていました。

 「ニホンカモシカ=特別天然記念物」ですから、もうちょっと神秘的な登場の仕方をしてくれればよいものを、上からポカンとした顔で見下ろしているって・・・(笑)。
 間抜け面を撮ってやろうとカメラを向けたら・・・何をされると思ったのか、カモシカは急に体を反転させると、崖の上へと走って逃げていきます。
 それも、足下から落石を引き起こしながら!

 どわあああ!何すんじゃワレェ!と思いながら、私も逃走。
 数秒後、ソフトボール大の岩が数個、さっきまで私がいた辺りに落ちてきて、派手な砂埃をあげました。
 直撃されていたら、救急車がいりましたね・・・。

 というわけで、おいこら、ニホンカモシカ!
 特別天然記念物だからって、やっていいことと悪い事があるぞ!

 それにしても、ニホンカモシカって正面から見ると、本当に間抜け面です。

(※)
 最近、奥多摩では、「奥多摩むかしみち」の水根〜中山集落近辺に出没するニホンカモシカの個体が有名です。
 あとは天祖山の、八丁橋付近から始まる最初の登り区間でも、丸々太った個体がよく目撃されているそうです。
21:07:00 | yo-ta | | TrackBacks

05 February

山で出会った動物(哺乳類)の記録 Part 3 イノシシ

 イノシシは、私が山で出会う事を、最も恐れている動物です(笑)。
 コイツには、奥多摩の鷹ノ巣山の頂上直下にある避難小屋そばの水場と、武蔵五日市近くの横沢入で会いました。

 まず鷹ノ巣山の水場での場合ですが、去年の9月の登山中。先に到着していた人が、ペットボトルに水を汲み終わる頃に私が水場に到着。
 先行者が出発しても、私はすぐには水場に寄らず、10mほど手前(浅間尾根側)で、水場周辺の風景を写真におさめていました。

 しばらくじっと写真を撮っていると、数メートルほど下の斜面、登山道から見下ろす位置のクマザサの間に、ガサガサという音とともにコイツが出てきました。
 あ、と思った私は、そちらにカメラを向けようと、体の向きを変えましたが、その時、登山道から小石を一つ、蹴落としてしまいました。
 カラカラという音に、イノシシはビクッと反応してこちらを見ました。そして、ヒト(=私)の姿を見ると、一目散に急峻な沢筋を、文字どおり転がり落ちるように逃げていきました。
 多分、水場周辺でヒトが動く気配が消えたので、安心して出てきたのですが、まだ居やがった、ということでびっくりしたのでしょう。
 ガラガラという音に続いた「ドスン」がちょっと痛そうで、彼(?)には気の毒なことをしたかもしれません。

 横沢入の時は、ホタルの撮影に向かう途中に出会いました。
 その時は、谷戸の中心の道でなく、沢沿いの道から直接、ホタルが乱舞するポイントに向かったのですが、そのとき、道沿いの斜面の上の藪が、ガサガサと揺れている事に気付きました。
 最初は、何か動いているけれど、こんな人里近くだったらどうせタヌキだろう、と思い、忍び足で近寄って、いきなりライトで照らしたら・・・イノシシだったという・・・。
 向こうもびっくりしたでしょうが、こっちも心臓が口から飛び出すかと思いました(逃げてくれて助かった・・・)。

 なお、奥多摩では、特にツキノワグマを怖がる人が多いですが、どちらかというと、イノシシの方が危険だと私は思います。
 ツキノワグマは基本的に怖がりで、よほどの事がない限り人を襲いませんが、イノシシはキレたりパニクったりすると、すぐに突進してきます(ついでに、私はイノシシはツキノワグマよりキレ易いように感じている)。
 それに、ツキノワグマは向かってきても一撃だけで逃げる事が多いですが、イノシシは執拗に何度も何度も体当たりを繰り返してくる事があります。

 ちなみに、その体当たりの衝撃は、車のボンネットにガツッときたら、停車中でもエアバックが膨らむほど強力なのだそうです。
 横方向からだと、ドアが変形して、内側に突き出すとか・・・。
 そんなものを何回も食らわされちゃあ・・・ねえ・・・。

 そんなわけで、コイツの方がツキノワグマの何倍も危険だと、私は思っています。
20:15:00 | yo-ta | | TrackBacks