Archive for 21 February 2005

21 February

屋久島で遭難事故増加。凍死も。

 “南国イメージ”で油断? 屋久島登山で事故増加(ニュース速報のため、2〜3日で飛べなくなります)

 これ、個人的に、すごく気になるニュースです。

 気になるのは、南国の屋久島で凍死・・・という部分ではありません。
 条件が悪い時は、真夏の平地でも凍死(疲労凍死)は起きますから、冬の屋久島で凍死しても、おかしい話ではありません。
 まあ、とにかく、私が気になるのは、何故、この時期に屋久島くらい北方の島に、南国を求めるのか、という部分です。

 屋久島は日本列島では南の方にある島とはいえ、全地球測位系で見れば、相当北方になります。
 そんな場所ですから、アメダスの観測結果を参照すれば、屋久島も、冬には平野部の気温が10℃以下まで落ちることがある場所だとわかります。
 これは、都心部を歩く人が、寒ッ!っと襟を立てる日と大差ありませんよね。

 さらに、屋久島で主に登山対象となる宮之浦岳は2,000mに手が届きそうな標高(1,936m)です。
 2,000mといえば、夏でも当たり前に凍死(疲労凍死)が発生する高度ですから、冬にこんな高さまで上がるなら、南国だろうが油断できない、と、普通の登山者やハイカーなら考えると思いますが・・・何故、そんなに事故が多発するのやら?

 山の世界では常識とされる内容ですが、標高を100m上げれば気温は約0.6℃下がり、さらに体感気温は風速が1m上がるごとに1℃ずつ下がります。
 ちなみに、この風速と体感気温の関係は、服が乾燥した状態での話であり、服が汗などで濡れていたら、さらに悲惨な結果(さらに1〜2℃の体感温度低下)が待っています。

 しかも、今は冬。
 下界で気温10℃の時、単純計算でも2,000mの気温は-2℃。
 で、アメダスデータでは、屋久島では下界でも風速2〜3m程度は当たり前のように吹いていますから、山上条件を考慮すれば風速はさらに倍〜3倍にも強くなり、体感気温は-10℃以下まで落ちることも考えられます。

 さて、これが南国装備で対応可能な環境といえるでしょうか?
 アメダスの観測データを探っていくと、-10℃という気温は、平野部なら東北地方北部まで北上しないといけない気温(しかも、それでも早朝などの最も気温が下がる時間帯が、やっとこうなる)と同等です。
 また、ここまで気温が下がる場所ではかなりの積雪も考えられますから、実際に行動する場合は制限要素が多くなることは、ちょっと考えれば想像できます(※)。
 決して油断できない場所であることは、机上理論だけでも十分理解いただけると思います。

 私も、特に秋口に奥多摩の1,000m峰でよく経験しますが、下界は夏日に届きそうな陽気でも、山の上では10℃もない、という極端な気温差は、山の中では当たり前にあることです。
 冬の奥多摩は、低山とはいえ1,000m以上の場所は積雪はメートル単位に達し、気温は氷点下二桁になることもあり、凍傷の症状を訴える登山者もいると聞きます。

 低山だから、とか、(日本国内基準で)南国だから、という漠然としたイメージで判断するのではなく、行先地域の気象条件を把握し、さらにそれをベースに目的地の状況を推測して計画を立てることは、「自分の身を守る上で」基本中の基本だと私は思います。
 気象情報は、アメダスで気温と風向風速をチェックするだけでも全然違うと思います(アメダスデータは気象庁ホームページで参照可能)。
 (ていうか、その山の季節ごとの対処については、普通、山のガイドブックに載ってますけどね・・・)

(※)積雪があると、行動が制限される。
 雪国生まれなのでよく経験していますが、普通に歩ける積雪深は、足首までが限界です。
 足が膝まで雪に潜ると、それを引き抜くのも一苦労ですし、歩行速度は無雪状態の半分以下に落ちます。
 ちなみに、そういう場所で本当に「はまる」と、下半身がロックされて身動きがとれなくなり、何とかしようともがくと、さらに「どつぼ」にはまることが良くありました(数人がかりで引き抜いてもらったり、「アザラシ」で脱出したこともあったっけ・・・)。
23:14:00 | yo-ta | | TrackBacks