Archive for 29 May 2005

29 May

『渡り鳥、海岸で大量死』・・・って、毎年の事ですが・・・。

 また朝日新聞が、微妙に解釈の分かれる報道をやってくれています。

 渡り鳥、海岸で大量死 餌捕れずに衰弱か 千葉〜福島
 →朝日新聞のニュース速報に飛びますが、2〜3日で飛べなくなると思います。

 記事の内容だけ見ると、ハシボソミズナギドリの死骸が大量漂着する事が異常な事態に見えるかもしれませんが、これは大なり小なり、毎年見られている現象です(ただし、短期間のうちに局所的な範囲で1,000羽の死骸を確認したということが、例年に比べて大規模なのか小規模なのかは、私にはわかりませんが)。

 詳しい事は、鳥類に詳しい皆様に援護いただきたいのですが、この時期にハシボソミズナギドリの死骸が大量に日本の海岸に漂着することは、特に珍しい事でも何でもなく、渡りの過程で衰弱した個体が、(嫌な言葉になりますが)「間引き」されているだけに過ぎない話だと私は理解しています。
 要するに、この試練を乗り越えられない弱い個体はここで脱落し、強い個体のみが生き残り、その遺伝子を子孫に残すという、自然のシステム(生物の生存戦略)の一環に過ぎない訳ですね。
 しかし、こうした背景を抜きにした報道では、これが「異常な事態だ」と受け取られかねない危険性をはらんでいると思います。
 この記事では、なぜこうした大量死が「毎年起きていることだ」という事もあわせて紹介しないのか、私には不思議です。
 (例えば、「毎年起きている事だが、今年は異常に多い」という感じの記事だったら問題ないと思うんですが・・・)

 朝日新聞の環境系報道には、何でか、今回のように原因や背景が曖昧になって、一般読者が混乱するような内容の記事が多くあるのが困り者です。

 過去には、都市部のジャコウアゲハがホソオチョウという外来種との競争に負けて数を減らしている、なんて報道がありました。
 記事の内容だけ見ると、ホソオチョウを根絶やしにすれば、ジャコウアゲハも復活する、と取れる内容でした。
 しかし、実際にジャコウアゲハが都市部で減っているのは、都市部の開発が進んで空地が減り、ジャコウアゲハ(及びホソオチョウ)の幼虫が食べる「ウマノスズクサ」という空地雑草型の植物が生育する基盤が少なくなり、おかげでジャコウアゲハのような大型のチョウは生きて行けなくなっている事が主要因なんですけどね。
 んで、空白地になった場所に、ホソオチョウのような体が小さくて、餌も少なくてすむチョウが入ってきているだけで・・・(ただし、外来種が国内で無作為に発生している状況は、どう考えても好ましくない事は間違いありません)

 つまり、一昔前と現在とでは、ヒトと自然環境の関わり方が激変してしまったため、それによってちっぽけな虫でさえ、生存が危うくなっている地域があると、そういう背景が説明されなければ、読み手側は「悪者を取り除け!」という短絡的結論に行き着いて終わりになってしまいかねません(近年の環境問題は、そんなに単純じゃない)。

 そういう誤解を避けるため、もうちょっと、正確な報道をお願いしたいものです。
21:00:00 | yo-ta | | TrackBacks