Archive for 12 September 2005

12 September

重要なことでも、あまり知られてない話。防衛庁の次期戦闘機調達計画。

 今回の選挙の結果を見て思ったこと。

 『過ぎたるは なお及ばざるが如し』

 ・・・誰がどう見ても、勝ちすぎやし・・・。

 では、本題です。
 9月も半ばになりました。
 毎年であれば、後半に茨城に行く算段をはじめる頃です。
 しかし、今年は百里基地航空祭が観閲式のために開かれないということもあり、「空」熱は冷め切ったままです・・・。

 という一方で、こんな話題でなんですが。
 現在、防衛庁では、中期防衛力整備計画に基づき、次期攻撃機(対地、対艦、対空戦闘能力を持った多目的戦闘機)の調達計画が推進中です。
 ん?それはF-2支援戦闘機のこと?と、思った方も多いと思いますが、違います。

 実は、F-2支援戦闘機(非公式愛称、ヴァイパーゼロ:日、フェイクファルコン:米)は当初130機の調達予定が、98機に削減されました。
 理由としては、想定通りの性能を発揮せず、その割にやたら高価だった(120〜150億円もしやがる)ため、ということらしいです(これは事実上、F-2は失敗だったと言っているようなもの)。
 というわけで、長期的に見て、航空自衛隊の中には約30機ほど、配備計画に穴があく事になります。

 ・・・まあしかし、国産といいつつ、1機購入あたり30億円もが自動的にアメリカに振り込まれるという機体(アメリカ製F-16戦闘機をベースにしているため発生する、ロイヤリティみたいな物)ですから、もっと早い段階でやめても良かった、と私なんかは思います。
 (このロイヤリティの話は、私の周囲ではほとんどの人が知らなかった。税金の用途のひとつであり、無視できるものではないはずなんですが・・・)

 で、とにかく、空自としてはF-2調達停止のためにあいた穴を埋める必要がある訳です(国籍不明機の領空侵犯があっても、飛ぶ機体がないのではシャレにならないので、これは当然の話です)が、F-2の前進であるF-1は、いい加減、時代遅れにもホドがあるため、2005年をもって全機完全退役の予定。
 そして、対地攻撃能力を付加されて運用されているF-4EJ改戦闘機(有名な「ファントム」の改良型ですね)は、ただでさえF-2計画の遅れのために、F-1からのつなぎとしてズルズル延命してきた機体であるため、老朽化が進み、数年後には運用に支障が生じることが想定されています(とはいえ、使い捨てが多い自衛隊としては、かなり頑張って使ってきた機体であり、機体の能力的に見ても十分、装備を効率的に運用した好例だと私は思います)。
 かといって、「空中戦命」なF-15J要撃戦闘機(現在の主力戦闘機で、「イーグル」の愛称で知られる。マニア間では超高価戦闘機の代名詞だが、F-2はこれ以上に高価だから始末が悪い)に対地攻撃能力を付加するのは、色々改造にかかる費用を考えたら、かなり無理がある話なのだそうです(普通に使っていても、べらぼーに金を食う機体。改造といっても、ほとんど作り変えくらいの額になるそうで)。

 とにかく色々あって、防衛上、必要とされているのが、新型戦闘機の購入、ということのようです。
 今の所、初期段階として7機ほどの購入計画が立てられていて、機種選定を行っている所のようですが・・・。

 しかし、こんな高い買い物(ン十億〜ン百億/1機)なのに。
 その財源は当然税金だというのに、国民のほとんどがこの件に関して無関心、というこの状況は・・・なんだかマズ過ぎませんか?
 (この件、ちゃんと情報開示はありました。しかし、国民が全く関心を持たなかったために「反論なきは容認」と判断され、ある日気がついたら、1機200億円もする戦闘機を、5年で100機買うので、大幅に増税するぞ〜ってことになるかも・・・ですよ?)
 私は、そう考えたら、ちょっと恐くなったんですけど・・・。

 で、ヨーロッパのエアショーレポートがあったので、ちょっと興味があって立ち読みしてみた航空系雑誌の中では、F-SX計画として、防衛庁で選定候補に上がっている機体にも、ちょっとだけ触れられていました。
 今の所、候補として最有力なのは米軍機(F/A-18E/F スーパーホーネット、F/A-22 ラプター、F-15E ストライクイーグル)のようだ、ということが、その筋の専門家の皆様やマニア間では言われているようです(まあ、これまでの自衛隊の装備導入経緯と、機体の戦績による信頼性を考えれば、妥当かもしれません)。
 その他には、ユーロファイター・タイフーン、ダッソー・ラファールなどの欧州機も含まれていましたが、日本では過去に欧州機の導入実績がないだけに、微妙な所でしょう(ついでに、タイフーンは自衛隊に必要とされているマルチロールタイプの量産の目処が立ってないから、どう考えても当て馬だ)。

9/13日追記
 えーと、この件について、防衛庁は既に8月末の段階で、ラプターとタイフーンとスーパーホーネットに絞っているという情報を頂きました(私が見た情報は、月刊誌ゆえ、ちょっと記事情報にタイムラグがあったようです)。
 なるほど、やっぱりストライクイーグルは落ちましたか。ついでに、JAS グリペンとダッソー・ラファールも落ちましたか。

 ・・・まあ、ラファールは、現有の自衛隊の装備との互換性が皆無に等しい上に、がめついフランス軍事産業(世界中に武器をばらまいていやがります)のことですから、そのまんま、「ミサイルからガトリング砲から、全部ひっくるめて買え」と言ってくるでしょうから、外して当然と言えば当然(高すぎだっつーの)。
 グリペンは、もともとはF-2のような単発機(エンジンがひとつしかない機体)では、今後の改修などに対応するポテンシャルに乏しいから、それを克服した機体の選定を行う、というコンセプトの計画で、選ばれるはずもない機体ですよね(グリペンは単発機だし。この機体のみでシステム完結しちゃってるから、日本側での改良の余地も少ないし)。

 でも、狭い国土を守るには、グリペンみたいに、一般道路からでも離着陸できる機体(700mの直線道路があれば、そこから離着陸できる。スウェーデンらしい、無駄のないコンセプトだ)があったほうが便利だ、と思う人も多いでしょうが・・・。

 日本の道路は、700mの直線区間があったとしても、電線だの看板だの色んなものが上に被ってて、滑走路代わりに使えやしねぇから、意味無し。

 戦闘機が飛ぶたびに、広域で停電が起きたり、方向指示がわかんなくなってもいい、という人は、まずいませんよね・・・。
 コンセプトをいかせない機体を買うのは、無駄金の見本みたいな物です。


 しかし、(私の感覚では)F-15Eは、ベースはF-15(自衛隊のイーグルと同じ)という、30年間も飛び続けてきた機体であることを考えると、今から新たに導入する機体としては、新たな「抑止力」の効果としては、ちょっと欠ける気がします。
 ということは、新造機であるF/A-18E/FかF/A-22か、という所ですが・・・。
 F/A-18E/Fは、基本的に艦載機として、空母での運用を考えられた機体だけに、降着脚まわりをはじめとした機体各部が、陸上飛行場での運用を考えると無駄に頑丈な感がある上に、空母を持たない日本で使うのは「意味がねぇ!」と、諸外国から笑われそうな気がします。
 では、F/A-22はどうかというと、この機体は最新鋭のステルスファイターであり、戦闘機としても支援戦闘機(攻撃機)としても抜群の性能を持っているため、諸外国へのインパクト(抑止力の効果)は絶大でしょう。
 しかし、確か対艦ミサイルが装備できなかったはずであり、四方を海に囲まれた日本で運用するには必須の、敵性艦船に対する抑止効果を持つ機体であるか、という点は疑問です。また、米軍でさえ、調達には1機200億円が必要で、そのあまりの高価さに調達計画の縮小を余儀なくされた、との噂もある機体ですから、対外販売価格あるいは日本でのライセンス製造原価がどこまでの額に跳ね上がるか、考えるだけで恐ろしいことになります(私は、1機300億円になっても驚きません)。

 今の所、私個人の意見としては、F/A-18E/Fを陸上飛行場運用型に微改造しての運用がベターかな、と思いますが・・・。
 それでも相当の金を食いますから、さてさて、どうなることやら・・・。

 以上、本日のマニアックな話題についてこられた方は、一体何人になるでしょうか(^^;)。
 (私の周囲では、最後まで聞いてくれた人は半分以下でした ^^;)
 しかし、市民レベルでこの方向に対し、中立的見地から的確に判断して、はっきりとした自分の意見を出せる人が一握りしかいない(私も出せない方の人間)ことは、かなり危険な話ではないかと私は思います。
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22:50:00 | yo-ta | | TrackBacks