Archive for 12 June 2006

12 June

カラスアゲハとミヤマカラスアゲハ。非常に良く似た近縁種の見分け方。

 ソニーのαの実写画像がWeb上に公開されているようです。

 【1st Shot】ソニー α100(β機)実写画像(デジカメWatch)

 私の中では「無視」属性の機体なので、前振りのネタにする程度で多くを語る気はありません。

 が、ひとつツッコむと、この撮影に使ってるレンズって、キット販売される奴の筈ですが。
 レンズの解像性能が、撮像素子上の画素の細分化に追い付いていない(ビルの窓枠や船の左のポールに、色収差から来る輪郭滲みが酷い)のがバレバレですが、「常用」あるいは「標準使用(標準性能判定用)」にもなるレンズとして、本当にこれで良いのでしょうか?(このまま出したら、"祭られる"と思うけどなぁ・・・)

 では本題です。
 現在、「表」のサイトで掲載中の美麗蝶、「ミヤマカラスアゲハ」ですが、この種は近縁種の「カラスアゲハ」(こいつもなかなか美麗な種)との見分けが、パッと見では難しい種としても知られます。
 私も、以前は何度か、種名を取り違えて掲載していた事がありました(最近は、いい加減、見分けにも慣れましたけど ^^;)。

 ちなみに、分類学上の命名から見ると、何となく「カラスアゲハ」がベースで、「ミヤマカラスアゲハ」が後追いで同定されたように見える(確認したわけではない)ので、「カラスアゲハとの相違点」という観点で、「ミヤマカラスアゲハの特徴」について、(奥多摩型の)実例をもとに書いていくと・・・。

1.前翅の表面、後側の縁にほぼ並行に、白っぽい(新鮮な個体では光沢が幾分強い)筋が入る。
 カラスアゲハの場合、この部分の筋は不明瞭。
 ただし、奥多摩産のカラスアゲハの、特に夏型のオスの場合、そこそこはっきりとした光沢線が入る個体が多いのがややこしい。
 ミヤマと並べて比べれば、明らかに薄いとわかるのだが、個体単独で見ると、「ミヤマだ!」と誤解する場合もある(より美麗な種であって欲しい、という願望が強いと特に)。


ミヤマカラスアゲハ
ミヤマカラスアゲハ(檜原村産)
檜原村産だが、連続した山地に含まれるためか、外見は奥多摩産と変わらない(カラスアゲハも同じく)。
この個体では、前翅の筋が明瞭に確認される。
なお、奥多摩産の夏型の、羽化直後の超新鮮個体を除くオスの前翅は、
この筋に沿ってのみ、光沢があるように見える場合が多い。

カラスアゲハ
カラスアゲハ(奥多摩町産)
前翅の縁に並行に、微妙に光沢の強い筋が入っているのがお分かり頂けるだろうか?
これを見て、「ミヤマだ!」と判断されている時もあるのだが、
上の画像と比べると、見た目ではっきり異なることがお分かり頂けるだろう。
正確な種の同定のためには、可能なら翅裏も同時に確認した方がよい。
(それができれば苦労しない、という場合が多いのも確かだが・・・)


2.前翅の裏面、外縁側にある白い線の太さがほぼ一定。
 カラスアゲハの場合、前広がりの楔形になる。
 奥多摩産のカラスアゲハやミヤマカラスアゲハの場合、春型はこの白い部分が広く、線の太さを判断できない場合もあるが、夏型はここで判別可能な個体が多い。

3.後翅の裏面、外縁側にある赤斑列の内側に白い筋がある。
 カラスアゲハの場合、ここに白い筋はない。
 ただし、奥多摩のミヤマカラスアゲハの、特に夏型はこの線が薄く、場合によっては全くない個体もいる(この線が消えるのは、暖地型の特徴だそうだ)。


ミヤマカラスアゲハ裏側
ミヤマカラスアゲハの翅裏(檜原村産)
前翅の縁にある筋の太さは、この個体では判断が困難だが、夏型は一定の幅の筋が出る。
反面、この個体は後翅赤斑列の内側に白い筋がはっきり確認できる。
夏型ではこれが薄かったり、途中で切れたり、挙句に全くない個体も多い。
なお、夏型の「筋消え」率は、低標高の場所で多いような気がする。
(最後の一行は個人の感覚。裏は取ってない)

カラスアゲハ裏側
カラスアゲハの翅裏(奥多摩町産)
前翅裏面の外縁側の筋は前に行くほど広がっており、後翅赤斑列内側に白い筋がない。
春型は前翅裏面の白筋部分が広く、太さの変化が判断不能な個体も多いので、後翅での確認が必要。


 以上のような感じです。
 春型、夏型のそれぞれの特徴に注意しながらこれらの部分をチェックすれば、両種の混同が生じることはまずないでしょう。
 (なお、目安として、奥多摩の山林生アゲハの発生期は、春型が5月上旬〜6月初旬、夏型が7月上旬〜9月頃まで。その間の6月中旬〜7月頭頃までは春型〜夏型の移行期になり、一時的に数が少なくなる)

 とはいえ、給蜜や給水のため、そこそこ長時間じっとしている相手ならともかく、飛翔中(特に翻翔、つまり羽ばたいて飛んでいる時)の個体を見て両種を判別するのは、かなり困難です。
 また、悪いことにカラスアゲハ/ミヤマカラスアゲハは飛翔力が強くて、普通に飛んでいる時でも、飛行速度はかなりのものですから、識別するにもすれ違う一瞬が勝負になるという困難もあったりします。

 それでも、場数を踏んで、一方の種だけでも良く見慣れていれば、ほんの一瞬の見え具合の違いで「あれは普通のカラスで、こっちはミヤマ・・・」と大体の"あたり"をつけられるようにはなって来ます。
 そして、慣れた人はその大体の"あたり"の正解率が9割を超えるという、素晴らしい成績を残してくれたりもします。

 しかし、「そういう人」は得てして動体視力も物凄く優れている人である場合が多いので、真似をするにも限界があります(^^;)。
 「そういう人」は、似た姿が多いことでは黒色系アゲハ以上の、ヒョウモンチョウの仲間でさえ、一瞬で正確に見分けていますからねぇ・・・(私はアゲハもタテハも、滑空中ならともかく、翻翔中の個体の識別はド普通種でもない限り、いまだに無理)。

21:48:47 | yo-ta | | TrackBacks