Archive for 17 August 2006

17 August

「微妙な立場」が理解できるようになってきました。

 今朝から、東京はまた人口が急激に復活したようですね(^^;)。
 明日、そして来週頭にはさらに人が増え、9月からはもっと増えるんだと考えると、早くも残暑負けモードに突入したくなってきました(^^;)(^^;)(^^;)。

 では本題です。

 さてさて、先日の東京大停電の際に、やはり蒸し返されていましたね。
 航空自衛隊入間基地所属のT-33練習機の墜落で、高圧線が切断された事故について・・・。

 事故の詳細や、その後の一部報道があまりにも実情を逸脱してお粗末だった件、プラス自衛隊側の対応のまずさという合計3点に関しては、上のリンク先が見事に説明しているので、そちらを読んでいただくとしましょう。
 しかし、この事故、私の周囲でもほとんどの人が「訓練生が、練習用のボロい機体でヘマを打って起こした事故」であり、「パイロットは真っ先に脱出して、機体が落ちたのが偶然河川敷だった」と記憶していたと言うのは・・・。

 細かいことは先のリンク先に譲るとしても、この事故は、実際にはベテラン中のベテランでもある佐官クラスの人が、飛行技術維持のために乗っていた時に起きたものです。
 また、練習機という呼称は低性能な機体という意味ではなく、単に「武装できない機体」というだけの意味です(T-33は本来、戦闘機として開発された機体。日本では武装せずに使っていただけ)。

 ついでに、パイロット2名は飛行高度が脱出用パラシュートが開く下限高度より低くなっても機体を制御し続け、もう民家に落ちることはない、と確信できる段階になって脱出しています(もちろん、パラシュートは完全には開かず、墜死した)。
 パイロットが機体性能上、どうあがいても助からないのに脱出ハンドルを引いたのは、整備員たちに対し、暗黙のメッセージ(全てが君たちの責任じゃない、という意味)を送ったものです。

 ここまで解説してはじめて、多くの皆様に「現場レベルでは見事な対応だったんだ」と理解していただけるわけで・・・。
 勇気ある2名のパイロットは、浮かばれないなあ、と私などは思ってしまうところです(最初から正しく報道されていればなあ・・・)。

 なお、この自衛隊機の「脱出」についても誤解が多いのですが、戦闘機や練習機から脱出するのは、嘘偽りなく命がけです。

 あの脱出シートは、基本的に機体が水平で、ある程度ゆっくり飛んでいる時でないと、安全に脱出できる保障はありません。
 マッハで飛んでいるときに脱出したら、ヒトの体は「音速の壁」の衝撃に耐えられずにバラバラに千切れ飛びますし、安全速度まで減速していても、機体が傾いていたら射出方向がぶれて機体(特に尾翼)に激突することもあります。

 また、射出の際にはロケット打上げの時にも等しい衝撃がかかるため、頚椎や腰椎を痛めて車椅子生活になるパイロットも少なくありません。
 挙句に、うまくキャノピー(コックピットを覆うアクリルガラス。普通は脱出前に火薬で吹き飛ばされる)が飛ばなかったら、それを突き破って打ち出されますから、脱出レバーを引いたところで、無事で済む人の方が少ないのが実態です(ていうか、水平・低速飛行中という理想的な脱出ができる状態は、普通に考えて「緊急事態」ではない)。

 そんな事実を背景に、航空自衛隊&ミリタリーマニアの間では、「脱出レバーを引いたパイロットのうち、1/3は再び空に戻り、1/3は地上に縛られ、1/3は帰ってこない」と言われています。
 アクション映画などでは、パイロットや主人公が何のためらいもなくハンドルを引いてスパスパ打ち出されていますが、現実はそんなに甘くありません。

 とまあ、ちょっとそっち方向に足を突っ込んでいるだけに、私程度の半端知識な奴にも、こういう背景が見えてしまうわけですが・・・。
 そんなこと、大多数の皆様には全然興味がないことだったりするわけですね(^^;)。

 そんなわけで、最近はミリタリーマニアが自虐的に言う、「左には右といわれ、右には左といわれ、普通の人からは変人といわれる」)という、微妙な立場が何となく理解できるようになってきました・・・。


 普通に考えて、自衛隊系のイベントに足を運んでいる段階で、「軍事礼賛家か、お前は?」みたいに言われるところですし・・・。
 かといって、「それ」が「実目的」で使われたらどうなるか、ほぼ正確にイメージできる上に、本当に本当の「現場」はそんなイメージを遥かに上回る惨状になることも判るため、絶対に「戦争反対」であることは間違いなく。
 しかも、調達関係で無駄な金が使われれば、どれだけの税金がドブに捨てられたかもわかるため、「何しとんじゃワレー!」と激しく抗議したくなるのです。

 そして、世間一般の皆様からは、「キモい!」の一言で片付けられてしまうわけですね・・・。

23:52:00 | yo-ta | | TrackBacks