Archive for March 2005

26 March

山で出会った動物(哺乳類)の記録 Part 10(最終回) ヒト

 多忙期の間のつなぎのつもりだったのに、意外に長くなった週末恒例、動物記録シリーズも、今回が最終回です。

 今週取り上げる動物種は、休日ハイカーである私が、山で出会う事を避けて通れない哺乳類です。
 哺乳綱霊長目ヒト上科ヒト科ヒト属ヒト。学名、Homo sapiens。つまり、私達ニンゲンのことですわ(笑)。
 しかしまあ、ホント、生息圏でもない場所なのに、毎週末や休日になると、どこからあんなにたくさんの個体が出てくるんでしょうかねぇ?この動物は。
 同種生物かつ同傾向の趣向を示す個体群のはしくれでも、とっても不思議な行動だと思います(まあ、私がヒトのことをとやかく言うのもどうかと思いますけど ^^;)。

 また、ヒトは社会性のある群を形成する動物の典型例であり、他者依存が強い習性を持っているはずです・・・が、私の主観では、山の中では同じ種でありながら、何だか出会うのが億劫な個体が目立つのは、気のせいでしょうか?
 そういう風に感じる要因について、特徴的な傾向を示す個体群ごとに、私の主観を書いて行きましょう。

オジサン群
 有名な山(百名山など)を登ったことを自慢したり、新素材の装備(特に防水透湿系)を自慢する傾向が強い。
 また、若い個体を見つけると、ここぞとばかり説教(日常系)をはじめるという、致命的な欠陥を持っている。
 しかし、中には素晴らしく洗練された「熟練者」や「求道者」もいるのが侮れないところ。
 オバサン群と異なり、単独〜3人程度までで行動している事が多い。
 ちなみに、防水透湿素材のウェアは、最近は誰でも持っているので自慢にならないし、百名山武勇伝は、私みたいな「百名山には何のこだわりもない派」には何の意味もない。

オバサン群
 3人寄れば「歩くクマ避け鈴」で、どんな急登の途中でも、一瞬でさえ黙っていないが、本人達にはその自覚がない。
 また、この群に属する個体群が接近中の場合、クマ避け鈴の音より先に、おしゃべりや高笑いが聞こえる場合が多い。
 さらに、3人以上の群れで行動する事が多いため、常にうるさく感じられるという、厄介な習性も持っている。
 しかし、一方でおやつ、果物、手料理などが次々出てくる「四次元ザック」を持っている個体が多く、世話好きな側面もあるので、オニイサンと呼ばれる程度に若齢の個体は、仲良くすると良い目を見られることも(たまに)ある。
 ちなみに、横耳で聞いていると、話している内容は9割方、近所の家庭環境の噂・・・(おいおい、ここまで来て話すことか?)。

ガキ群
 「走行→転倒→号泣」のパターンを、一日に何回も繰り返す、小型のヒト個体群。
 号泣時に発する音声は、周囲にいる無関係なヒト個体群を苛立たせるのに十分すぎる効果を持つ。
 また一方で、最近では山頂からの大展望を目の前に、携帯ゲーム機の画面やカードバトルに没頭している、わけのわからない個体も多い・・・(おいおい、ここまで来てやることか?)。
 なお、個体単位では単にうるさいだけだが、集団化すると破壊力は人数の累乗に膨れ上がる。
 そこにオバサン群の援護が加わると無敵になるのが、大変厄介だ。

ワカモノ群
 あり余るエネルギーのはけ口を探している個体群。群行動している時は、意外に統率が取れており、思った以上に礼儀正しい個体も多い。
 よって、山の中で出会う個体群に関しては、最近の風評とは裏腹に、出会っても安心できる相手である場合が多い(町の中では知らない)。
 とりあえず、町の中でも、山の中で見せる習性を保って、生活ステージを進めてほしいものである。
 しかし、現状で山頂でカレシ群、カノジョ群に変態してイチャイチャすんのだけはヤメロォ!!
 (弁当開いて、あ〜ん、とか・・・。うらやましいだろっ!)

オレ(俺)
 YO-TAと名乗る個体。行動は突飛で奇異。一方で、徹底して詰めが甘いのが特徴。
 特徴的な行動として、登山口でバッテリーの充電を忘れたデジカメを片手に空を見上げていたり、デジカメはあっても記録メディアを忘れて空を見上げていたり、乗る予定だったバスに乗り遅れて空を見上げていたり、山に行く予定の日に起きたら昼だったことに気付いて天井を見上げていたりすることが多くある。
 なお、山行計画も、「あの山で○○虫が見られる」と聞いた瞬間に立てるなど、場当たり的な行動が多いのとともに、ルート計画も、「まあ、こんな感じでいいんじゃないか?どうせ行ってみれば全然違うし」という投げ槍なものが多い。
 ちなみに、こんなにいい加減でもA型である・・・って、血液型占いなんて、科学的に完全否定されていますから!残念っ!

 と、いうわけで、「オレ」含めて、色々辛辣な事も書いてしまいましたが、それだけヒトという生物の目から見た、同じヒトという種の生物は、魅力的で観察し甲斐のある存在だ、ということです。

 ・・・これでフォローになってるのか?(^^;)
 なってないような気がするので、[more...]以降に、もうちょこっと続きを書きます。

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20 March

山で出会った動物(哺乳類)の記録 Part 9 キツネ&ツキノワグマ

 今回の2種は、実際にはどちらもまだ本体に会ったことがない動物です。タイトル変えろよ、と言われるかも(^^;)。
 奥多摩の、私がよく行く場所には、間違いなく生息しているらしいのですが、出会う機会には恵まれていません。

 キツネは、昔話の中ではタヌキと並んで、ヒトを化かす動物のツートップです。
 そういう扱いを受けていることから、昔はキツネもタヌキと同じくらい、身近にいた動物だったことがうかがえます。
 しかし、北海道のキタキツネはともかく、東京近郊ではホンドギツネはタヌキと比較して、人間の作った環境への適応性がそれほど高くないらしく、数が極端に減っていると言われています。
 奥多摩の山の中でもあまり姿を見られることはなく、かなり運が良くて、山間部の集落内のゴミをあさりに来る所を見る程度だそうです。
 (逆に北海道では、キタキツネはよく見かけても、エゾタヌキの姿を見かけることは、ほとんどないそうですね・・・)

 奥多摩の山々は、関東の低山のご多分に漏れず、スギ・ヒノキの人工林が広がり、落葉広葉樹林(ネズミや木の実等、餌が多い)は浮島のようになっている場所が多くなっています。
 生息に適した環境の面積が狭い+連続性が確保されていないという事もあって、キツネは近年、その姿を見るのがまれになってしまったようです。
 タヌキと違い、雑食といっても肉食が主体となる傾向を示すことも、「食えるものは何でも食う」というタヌキと比較して、勢力を盛り返せない要因かもしれません(最近は、主たる餌であるノネズミも減っているので・・・)。
 ちなみに、タヌキと思われる足跡は腐るほど見ている私ですが、キツネに関しては、まだ奥多摩では足跡も何も見たことがありません(足跡の確認は、積雪期でないと無理かもしれませんね・・・)。

 もひとつちなみに、首都圏に近い地域で見ても、千葉県内ではキツネはほぼ絶滅の状態にあるといわれており、埼玉県では西部(秩父方面)に追いやられ、神奈川県でも丹沢山塊などの山域部に追い込まれ、いずれの地域でもかなり危機的な状態だそうです。
 タヌキと並び称された時代は、本当に「昔話」になってしまうのでしょうか・・・。

 そしてツキノワグマ。
 こちらは古い資料によれば、昔は武蔵野・府中付近〜奥多摩まで、都内でも広い範囲に生息していたようです。
 しかし、現在では青梅市西部〜あきる野市西部〜檜原村〜奥多摩町の狭いエリアに追い込まれてしまいました。
 もちろん、これは極端に進んだ宅地化が大きな要因だと言われています。

 現在、奥多摩町の山間部には推定で約50頭前後のツキノワグマが生息していると言われていますが、あの面積の中にたったの50頭しかいないのですから、コイツに出会えたら、相当の幸運に恵まれたと思った方がいいみたいです。
 ちなみに、かなり古い情報ですが、八王子の奥高尾山系、景信山〜小仏城山までの間にも、一時はツキノワグマの生息が確認されていたようです。今はもうスギ林だらけなので、継続して生息している可能性はかなり低いと思いますが・・・。
 (神奈川県側は雑木林も多いので、そっちに逃げていたら、まだ何とか大丈夫かも・・・という程度。東京都側は、見事に杉だらけなので、まずいないでしょう)

 なお、ツキノワグマの生息の痕跡(足跡、爪痕、クマ棚等)に関しては、奥多摩では結構、見る事が出来ます。
 私が特によく見るのは、サス沢山〜惣岳山(小河内)間の落葉広葉樹林、鷹ノ巣山の浅間尾根沿い(稲村岩尾根のヒルメシクイのタワでも足跡確認)、石尾根の六ツ石山の北側周辺です。
 体が大きい動物だけに、残す痕跡も派手でわかりやすいので(^^;)、皆様もちょっと注意すれば、簡単に確認できると思います。

 今日、取り上げた2種に共通しているのは、環境の変化によって、特に生息域を奪われ、数を減らしている動物であることです。
 キツネも、ツキノワグマも、昔から普通にそこにいたはずの動物ですが、今ではほとんどお目にかかれません。
 私は、彼らがいつまでも、山の中にいて欲しいと思います。
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12 March

山で出会った動物(哺乳類)の記録 Part 8 アナグマ&タヌキ

 この、「同じ穴のムジナ」コンビには、奥多摩で出会いました。

 まず、アナグマに会ったのは、秋の川苔谷林道です。
 百尋の滝周辺の紅葉撮影の帰り道、聖滝の慰霊碑の所で休憩していると、林道の10mほど下流側の下斜面からコイツがひょっこり姿をあらわしました。

 野生の動物なら、普通は周囲を十分に確認してから出てくると思いますが、この時あらわれた個体は、特に周囲を気にする事もなく姿をあらわし、あろうことか林道のアスファルト上をのっしのっしという表現がぴったりの歩調で私のほうへと向かってきます。
 よおし、それなら、とカメラを構えると・・・その動きでやっと私に気付いたアナグマは、ビクッと身を強張らせ、こちらを確認するや否や、今までとは全然違う素早い動きで逃げていってしまいました。
 多分、カメラを構えなかったら、もっと近くまで来ていたことでしょう。最初からもっと警戒しろって(笑)。
 (ちなみに、逃げ足は驚くほど速くて、写真は撮れませんでした・・・)

 タヌキは奥多摩駅から日原に向かう途上、倉沢を過ぎた先のカーブで、バスの前から逃げてゆく姿を見ました。
 日原街道は、乗り物に弱い人には地獄としか思えない、小径カーブが連続する道です(私は平気なので、横Gを楽しんでしまいますが・・・)。
 こういう、山道のブラインドカーブでは、出会い頭に野生動物に出会ってしまうことが時々あります。
 なお、奥多摩では、タヌキはかなり集落に近い場所でも足跡が見られたりしますので、特に夜間などは、出会い頭遭遇の確率も高いと思います。
 ただし、タヌキは危機が迫ったら「タヌキ寝入り」のごとく、うずくまってじっとしてしまう習性があるので、そのまま自動車にはねられたりすることが多くあります。
 夜間、山道を運転する時は、注意してやってください。

 それと、タヌキの姿は、なんと渋谷のど真ん中、宮下公園付近でも見かけた事があります(しかも親子連れ)。
 山手線の電車内から宮下公園を見ていたら、公園の下段にあるコンクリートの犬走りの上を、茶色い親子連れのネコが歩いている・・・と最初は思ったのですが、ネコにしては鼻先が尖っています。で、よくよく見たら・・・タヌキでした(^^;)。
 夏毛だったので、いわゆる「タヌキ」のようなボテッとしたシルエットではなかったことから、最初はネコと錯覚してしまいました。

 それにしても、こんな、渋谷のど真ん中で姿が見られるという事は、夜、人家近くで見る、あわてて逃げてゆく動物の中には、野良猫に混じってタヌキの姿もあるのかもしれません(ただし、普段はこんな所にいるはずがない、という先入観から、野良猫だとばかり思っているとか・・・)。
 ちなみに、ある研究では、タヌキは最近、特に市街地では増加傾向にあるそうです。むむ?お前ら、やるな。

 タヌキは、どうやら私たちが想像している以上に適応力の高い、たくましい動物なのでしょう。
 うーむ、化かされてるなぁ(笑)。

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05 March

山で出会った動物(哺乳類)の記録 Part 7 イタチ、テン、ハクビシン

 週末恒例の動物ネタも、気づけばPart 7になってしまいましたね。
 自分的には、Part 4くらいで飽きて終わると思っていましたが・・・(^^;)。
 ま、まだちょっとネタはありますので、しばらくは、この週末ネタにお付き合いくださいませ・・・。

 さて、それはさておき、今週は「イタチ、テン、ハクビシン」の話題です。
 見た目に似ている三兄弟(ハクビシンは、分類学的には兄弟ではありません)ですが、それぞれ全然違う場所で見かけています。

 イタチに会ったのは、高尾山の自然研究路6号路沿いです。
 頂上から下山中、そろそろ琵琶滝に近付く頃、登山道の隣を流れる沢沿いを、茶色いものがスルスルスルッ、という滑らかな動きで通り抜けていきました。
 あっ!と思って目で追うと、まるでフェイクファーのマフラーに手足をつけたような、スマートで敏捷な動物がその正体でした。
 シルエットと大きさから、イタチだとわかりました。

 テンに会ったのは、奥多摩の日原林道です。
 秋も終わり頃、天祖山の登山口付近で、私から逃げるためか、慌てて斜面を登ってゆく冬毛の黄色い背中がありました。
 少し登った所で、こちらを振り返り、後脚立ちした姿の可愛らしさが忘れられません。
 その後、テンは私を見ると、ヒトだぁ!というリアクションでクルッと振り返り、山の中へと消えて行きました。
 イタチより大きく、ネコほどの体で、敏捷かつしなやかな動きは、さすがと言いたくなるほどでした。

 ハクビシンは、実は生きている個体にはまだ出会った事がありません。
 交通事故にあったのか、道端で血を吐いて事切れていた死骸(奥多摩、川井付近)と、溺れてしまったのか、沢の流れの中に引っ掛かっていた死骸(裏高尾、小仏)を見た事があるのみです。
 意外に都心近くの人家周辺でも見られる動物ですが、夜行性であるだけに、私が山を訪れている昼間には、出会える機会が少ないと思います。

 ちなみに・・・姿がよく似たシリーズの動物で言うと、私はまだオコジョの姿は見たことがありません。
 白山の弥陀ヶ原あたりから高所、立山の室堂より高所には生息しているようですが・・・最近はあまり姿を見かけなくなってしまったという話を聞いています(北陸生まれなので、自然、この二山での高山経験が多い)。
 特に、日本の分布西限域になる白山山系のオコジョは、温暖化の影響をもろに受けると考えられており、昨今の動向が気になるところです。
 京都議定書が発効したことですし、温暖化に何とか歯止めがかかってくれると良いのですが・・・。

23:20:00 | yo-ta | | TrackBacks