Archive for April 2005

16 April

ただいま、近所でカラスが営巣中 -カラス営巣観察日記 Part.1-

 先日、近所の街路樹の上に、枯れ枝が引っかかったような、変なものがある事に気づきました。
 よく見ると、それはカラス(ハシブトガラス)の巣でした。

 東京のハシブトガラスに関しては、色々事情があって、そこそこ、生息状況等が明らかにされています。
 近年は、色々あった結果、都心部におけるカラスの生息個体数は減少した、と言われています。
 しかし、いまだに新宿東口には、朝、ゴミ袋をめがけて低空飛行する連中がいたりもします・・・(総数が減った分、少数精鋭化してる気がしないでも ^^;)。

 一方、都心を追われた個体達に関しては、郊外部や多摩地区等に移動するとともに、ヒトのゴミなどの人為生活依存型だったライフスタイルを、郊外型(採取行動などが中心)に切り替えている個体群もいるそうです(さすがに器用だな)。
 ところが、都心を追われたものの、もともとの生活から転向できない個体群に関しては、こうした、住宅地の狭間に、生きる場所を求めているそうです(以上、東京のカラスを追いかけている、専門家に聞いた話です)。
 ここで営巣しているカラスも、そんな個体達なのかもしれません。

ハシブトガラスの巣の場所
カラスの巣のある場所
 営巣木はケヤキで、樹高は10m前後。巣の高さは8mくらい。
 巣の直径は、目算で約30cm。巣の下は、4車線の国道(交通量はかなり多い)。

 本当は、もう少し葉がない時期に存在に気づいたのですが、ここしばらくの陽気のために、葉が一気に開いて、見えなくなってしまいました(もっと早く、撮っておくんだった・・・)。
 なお、街路樹なので、外灯の明かりの影響を受けないか心配でしたが、夜間に見てみたら、見事に光を避ける場所でした。

ハンガーがいっぱい
巣を拡大
 針金ハンガーが、巣材としてたくさん使われています。
 これは、巣を補強するため、と言われているそうです。

親鳥がいるぞ!
親鳥が中にいる!
 撮影中に、巣の中に親鳥がいる事に気づきました。
 矢印の所の出っ張りは、親鳥の尾羽です。

 東京では、カラスの繁殖期は今ぐらいから6月にかけて、と言われているそうです。
 この巣に関しては、これからしばらく、カラスに詳しい人に話を聞きながら、観察を続けてみようと思います(でも、見つかったら撤去されるんだろうなあ・・・)。
 まあ、撤去されたら、その時はそのときという事で・・・。

 なお、都会のカラス対策に関しては、環境省がなかなか詳細なマニュアルをまとめていますので、興味のある方は目を通してみると良いと思います。
 『自治体担当者のためのカラス対策マニュアル』

 私の場合、上記マニュアルのP35にある、ハシブトガラスがヒトを攻撃するまでの動作に関して、よく読んでおく必要がありそうです(この巣、自宅〜駅の途中だから ^^;)。

 なお、今日、この巣を撮影していると、遠くから「ガァガァ」という声が響き、巣の中にいた親鳥が慌てて飛び出す様子が観察できました。
 ・・・もしかして、私が巣にレンズを向けている事に、ナーバスな反応を示したんでしょうか・・・?
 (やっぱり、今後の観察方法については、詳しい人に聞こう --;)
19:58:55 | yo-ta | | TrackBacks

11 April

石砂山のギフチョウに関する心配事 -今年撮った写真に、丹沢型がいない-

 昨日、話題に出した、石砂山のギフチョウは、近年、他地域から持ち込まれた個体群の繁殖により、地理的変異(※)が失われてきている事が問題視されています。

 そこで、昨日までに、私が撮影してきたギフチョウの写真を、もう一度、見直してみました。
 ギフチョウの地理的変異は、羽の模様で見分ける事が出来ると言われています。
 以下、ちょっと私の個人的な判断で見分けてみた結果を示してみます。
 (判断のために参照したのは、他のサイトで掲載されていた、現地ギフチョウ保護の会で使用している識別用の写真メモです。転載許可を得ていませんので残念ながら、ここではご紹介できません・・・)

丹沢型
丹沢型と思われる個体
 これは2004年に、石砂山の隣の、石老山の金毘羅神社付近で撮影した個体。
 赤印の部分の斑紋の外側辺縁部が内向きに湾曲し、下端が中脈と呼ばれる筋に届いています。
 これで、後羽の黒斑が確認できていたら、丹沢型だと判断できたかもしれません。

日本海岸型?
日本海岸型と思われる個体
 これは今年、2005年の4/9日撮影の個体。
 上の写真の個体で見た斑紋が中脈に届いていません。また、後羽に印を付けた黒斑も、外側の辺が内側に強く湾曲していません。
 これは、典型的な日本海岸型の形質と言われているそうです。

 こうした視点で、昨日掲載した個体の写真を見てみると・・・

これも日本海岸型?
日本海岸型を示した個体
 前羽の黒斑が中脈に届いていません。また、後羽の湾曲が見られません。
 おそらく、日本海岸型と思われます。

これも丹沢型ではない
よくわからない。が、丹沢型ではない。
 前羽の黒斑が中脈に届いていないので、丹沢型ではなさそうですが、どの地域型かまでは、わかりませんでした。

 というわけで、昨日掲載した写真の中には、丹沢型の形質を示した個体は、ありませんでした。
 ちなみに、撮影データの方を過去にさかのぼって確認した所、昨年(発生後期に訪問)は、丹沢型が多く写っていましたが、今年(発生前期)に撮影した個体は、丹沢型の特徴を示した個体は『ありませんでした』。

 たった2〜3年程度のことで話をするのは危険ですが、とりあえず、この地域において、他地域産個体群を放蝶した事による、遺伝的混雑が発生している事は間違いないようです。
 ちなみに、こうした遺伝的な混雑を発生させる事は、この地域で長年かけて獲得してきた遺伝的形質を喪失させる、重大な「環境破壊行為」です。
 こうして雑交配が起きた事で、おそらくは、この地で獲得してきた丹沢型の形質から、新たな種分化等が発生する可能性は、永遠に失われたでしょう。

 そんな大げさな、と思う方がいらっしゃるかもしれませんが、一例として、ギフチョウの近縁種のヒメギフチョウ(東北〜北海道に分布)は、何百万年か前に、ギフチョウ(中部〜西日本に分布)から分かれて、新たな種として定着した事が知られています。
 今の時代に生きるギフチョウに、遠い将来、同じ事が起こらないと、「ヒト」程度の生物が決められる事でしょうか?
 私は、とてもそんな風には思えません。そして、新たな種が分化する可能性を、「ヒト」程度の生物が奪ってよいとも思っていません。

 なお、上に掲載した写真の個体に対する地理的変異の形質の判断は、参照資料をもとに、私の独断により下した判断であり、上の写真で判断を誤っていた場合、その責任は私に帰します。

(※)地理的変異
 同じ種でありながら、地域ごとに微妙に違った生態および体色などを示すグループに分けられる変異体の事。
 ギフチョウは、産地ごとに微妙に成虫の羽の斑紋が異なるほか、幼虫の食草であるカンアオイについても、微妙に異なる種(カントウカンアオイ、ランヨウカンアオイなど、地域ごとに異なる)に依存するという、典型的な地理的変異を示す生物です。
23:40:40 | yo-ta | | TrackBacks

05 April

そろそろ「春の女神」が降臨したようです。

 先日、チラッと話題に出した、「春の女神」ことギフチョウについて。

 今年も、関東地方の安定発生地である石砂山周辺(神奈川県津久井郡藤野町)で、ボチボチ、発生が確認されているようです。
 ここしばらく、一日ごとに寒くなったり、暖かくなったりしている関東地方ですが、ギフチョウが発生したということは、そろそろ気候も安定してきそうです。
 (ついでに、花粉もそろそろおさまって来そうです・・・ってか、はよおさまれ!!!)

 それにしても、去年の今ごろは、もうギフチョウが飛び回っていたというのに、今年は少数がパラパラと確認された、という報告があるだけとは・・・。
 今年は春の訪れが、かなり遅れ気味なのだろうか?それとも、ここ数年が早すぎたのだろうか?

ギフチョウ
これは2004年4月10日撮影の、石砂山のギフチョウ
 後羽の縁がボロボロになっているのは、羽化後、それなりの期間を生きてきた証拠です。

 なお、上の写真で前羽についている黄色いシミは、生息実態調査のためにつけられたマーキングです。
 これ、撮影派人間には、ひじょーに厄介なものでした。
 こんな、あからさまなマーキングもあったりしたので・・・。

赤いマーキング付き
この赤、毒々しいって!

 今年は「調査」は抜きにしてもらいたいものです。
21:47:17 | yo-ta | | TrackBacks