Complete text -- "ヒグラシ(♀)の没姿"

09 August

ヒグラシ(♀)の没姿

 8/1日付で「しばらく更新停止」の宣言を出してあったのに、連日、30人を越えるサイト訪問があったことに驚いています。
 しばらくの間、何のネタもなく、申し訳ありませんでした・・・。

 では本題です。
 昨日の奥多摩湖の南岸遊歩道訪問で、ヒグラシを見つけました。

ヒグラシ(♀)
ヒグラシ(♀)


 この個体は、普通のセミのフォルムと比較し、明らかに腹部が小さいことから、遠目からもすぐにメスとわかりました(オスは普通にセミの形)。
 しかし、ぐいぐい近付きましたが、目と鼻の先まで近付いても逃げません。

 よく観察すると、この個体、見た目に幹にとまっているだけのように見えましたが、その状態の没姿(つまり死骸)でした。
 どういう訳かはわかりませんが、木の幹に口吻を突きたてたまま、死を迎えたようです。
 糸状菌に感染していたのか、口吻がはさまったり樹液に絡めとられたりして、抜けなくなったのか・・・。

 何にしても、昆虫の中で天寿を全うする個体の数は、産卵数からみて絶望的に少ないことを考えると、ヒトの目には奇異に映っても、彼らにとっては「ありふれた死」のひとつの形でしかないのでしょう。


 ヒグラシは、朝夕に少し悲しげに「ケケケケケ」あるいは「カナカナカナ」と鳴くセミで、初夏の夕暮れを彩る風物詩として、多くの皆様に好かれています。
 私も、セミの中ではエゾハルゼミ(鳴声:ミョーキン,ミョーキン、ギッ、ケケケケケ。ケケケの部分はヒグラシそっくり)と並んで、最も好きな鳴声の種です(反面、嫌いなのはアブラゼミ。うるさいし、暑苦しい ^^;)。

 しかし、ヒグラシには他のセミにはない受難が待っていることもあります。
 世界で唯一、セミに寄生する蛾、「セミヤドリガ」が主に寄宿主にするのが、このヒグラシであることは有名です。
 (ごく稀に、アブラゼミやミンミンゼミでも観察されるらしいが、私はヒグラシ以外で見た事がない)

 セミヤドリガは幼虫がセミの体に取り付き、体液を吸いつづけます。
 その過程で白い繭状の物質で体を包むため、腹に白い綿のようなものをつけている個体がいたら、それはセミヤドリガに寄生されている個体です。

 もう一種、有名なものとしては、ヒグラシヤドリバエがいます。
 この種はオスに寄生し、幼虫はオスの腹にある鳴くための筋肉(発音筋)を食べて成長します。鳴くのはオスだけなので、必然的にオスだけに寄生します。
 まあ、名前からしておわかりいただけるとおり、このヤドリバエも特異的にヒグラシに寄生していることが多く知られています(ヒグラシのオスの腹部は半透明ですが、その中でウネウネ動くウジ状の虫が見えたら、それがヒグラシヤドリバエです。ちなみに、セミのオスの腹の中は、もともと空洞)。
 しかし、発音筋が食べられてしまうわけですから、寄生されたオスは鳴声を出すことはできなくなり、繁殖に参加できなくなります。

 あの悲しげな声でなくこのセミには、何でこんなに受難が多いのか・・・。
22:16:21 | yo-ta | | TrackBacks
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