Complete text -- "映画『バタフライ・エフェクト』(長文いってみよう!)"

28 May

映画『バタフライ・エフェクト』(長文いってみよう!)

 劇場で映画を見るのは、2月の「運命を分けたザイル」以来です。
 いやあ、やっぱり大画面はイイ!!

 とまあ、それはさておき、新宿コマ劇場前は、本日は大行列が出来ていて、最初はかなり焦りましたが、それは話題作『ミリオンダラー・ベイビー』の劇場でした(^^;)。
 ちなみに、私の目指す劇場前は、新宿基準ではがら空きと言ってよい程度のささやかな列が・・・。

 さすが、映画の好みに関しては、一般の人とは微妙に違う所にツボがついている私です(^^;)。
 どの辺が微妙にずれているかと言うと、『アルマゲドン』があまりにお約束通りな展開なのに飽きて途中で寝たとか、『タイタニック』が途中で先が読めていびき付きで寝たとかいう武勇伝(?)があったりする感じです。
 (ついでに言うと、両作品の鑑賞に同行してくれた女性、それぞれには、激しく嫌われましたねぇ・・・ ToT)

 そんな事はさておき、『バタフライ・エフェクト』です。
 どちらかというとミニシアター系の劇場で公開されている作品で、前評判はすこぶる良いものの、鑑賞後評判は見事にまっ二つに分かれている作品です。
 ちなみに、タイトルの「バタフライエフェクト」とは、直訳すると「蝶々効果」というもので、「カオス理論」を説明するためによく使われる言葉です。
 いわく、「北京でチョウが羽ばたけば、ニューヨークに嵐が起きる」というわけで、一つの同じ現象も、わずかな初期条件の違いが全く異なる結果に・・・という小難しい話になって、多くの人の脳味噌をカオスな世界に彩るのが普通ですが、私たち日本人は、こういう意味の言葉だと覚えておけば良いです。

 「風が吹けば桶屋が儲かる」

 うむ、先人達は、何とわかりやすいことわざを残してくれたのやら(^^;)。
 では、それをふまえて、ネタバレなしのあらすじと感想に続き、[more...]以降にネタバレありの感想を書きましょう。

あらすじ:
 主人公、エヴァンは、幼なじみのケイシーに恋をしていたが、ある事件をきっかけに、彼女や幼なじみ達とは疎遠になってしまっていた。
 しかし、その事件の詳細が、エヴァンには時々訪れる、記憶のブラックアウト(短時間に生じる記憶喪失のようなもの)によって、理解できない。
 やがて大学に進み、成人し、ブラックアウトに悩まされる事もなくなった・・・かに見えたエヴァンだが、ある日、幼い頃から(ブラックアウト対策として)つけてきた日記を読むと・・・過去の記憶がよみがえるとともに、それを積極的に改変する事が出来ることに気がついたのだった。
 そして、エヴァンはケイシーに幸せになってほしい一心で、繰り返し、過去を改変しようとするのだが・・・。

感想(ネタバレなし):
 微妙です(^^;)。事後感想がまっ二つに分かれる理由がわかった気がします。
 素直に見れば、すごく切ない純愛ストーリーに見えますが、そういう路線の割には、少年犯罪や幼児ポルノ的な内容が入っていて・・・。
 とにかく、頭を使って見ないと、難解な部分が多々ある作品だと思います。

 しかし、主人公が過去を変えようとした結果が、それぞれ全然違う結果になって、エヴァンとケイシー(ついでに、その他の幼なじみや、さらにはエヴァンの母も)翻弄されるという、この手の作品にはありきたりなストーリー展開が、あれよあれよという間に、一気にラストまで持っていかれるテンポの良さは特筆ものだと思います。
 見終わった後、私は「あれ、もう終わった?」と思いましたが、余程緊張して見ていたらしく、席から立ち上がった時には、関節がギシギシ言いました。

 とにかく、主人公が今度こそ、と意気込むほど、予想もしない未来に結びついてしまうというあたりが、「バタフライ・エフェクト」というタイトルに見事に結びついています。

 そして・・・結局、主人公はある決断をしてしまうわけですが、その結末がすごく切ない。
 とりあえず、遠距離恋愛中の皆様は、あまり感情移入せずに見ることをお勧めします(^^;)。
 (脊髄まで貫通するボディーブローになると思いますよ・・・)

 では、毎度のごとく、感想(ネタバレあり)は、[more...]以降です。
 ここからはネタバレありの感想です。まだ映画を見ていない皆様、結末や伏線を知りたくない皆様は、すぐにブラウザの「戻る」をクリックしてください。

 さて、それでは思いっきり長文になる、ネタバレありの始まりです。

 この映画、いきなり誰かに追われているらしい人物の登場ではじまります。
 え?あれ?と思っているうちに、時間軸は13年前、主人公の幼年期に飛びます。
 そこで、主人公のエヴァンがたびたび記憶を失うことが説明されます。少年時代には、記憶を失っている間に、何か大事件が起きたようで、そのためにエヴァンはケイシーと離れてしまうことになるのです。

 さて、青年期のエヴァンはある日、日記を読むことで過去にタイムスリップして、その過去の記憶を追体験できることに気がつきます。
 しかし、その記憶は確かなものなのか・・・。確かめに行った先で、エヴァンは半ば廃人と化したかつての気弱な少年に罵声を浴びせられ、ケイシーの心の傷を抉ってしまい、結果、ケイシーは自ら命を絶って・・・。
 そんな結末に半ば絶望したエヴァンですが、過去を追体験できるなら、変えてしまえばいい、と思いついて、ケイシーを幸せにすべく、それを実行しますが・・・。
 そこは「バタフライ・エフェクト」というタイトル通り、そんなに簡単に上手く行くものではありません。

 過去の改変を繰り返す過程で、エヴァンはケイシーを幸せにすることもありましたが、どん底の生活に突き落とすこともありました。
 しかし、エヴァンは何度も何度もそれを繰り返し、やがてちょっとしたいたずらのつもりが、近所の母子の命を奪ってしまったことにより、幼なじみ達の運命が決定的に狂ってしまったことに気づき、その過去を変えようとしましたが・・・。
 ついにタイムパラドックスは彼の体にも及び、事故によって手足と、そしてケイシーの心を永遠に失ってしまったという未来に結びついてしまいます。
 また、エヴァンのハンディキャップが原因でヘビースモーカーになったエヴァンの母親は、末期ガンに苦しんでいたり・・・。

 とにかく、違う未来になる度に全然違う人格として出てくる、ケイシーやお母さん役の女優さんの演技力は素晴らしいものがあります(^^;)。
 特にケイシーは、学園のヒロインから娼婦まで、色んな人生を転々としてしまうのに、それぞれの人生を(メイクや服装だけでなく、仕草や言葉遣いから、人生に希望を持っているか疲れているかなどを)見事に演じ分けていますから、エヴァンが苦しみ、戸惑い、そして最終的にあんな結末を選んだ理由もわかるような気がします。

 そして、エヴァンが最終的に選んだ結末。
 それは、自分とケイシーが全く関わらない人生を歩む、という事でした。
 エヴァンにとってそうだったように、ケイシーにとってもエヴァンは初恋の相手で、エヴァンから離れたくないために、両親が離婚した時、幼児趣向趣味を持つ嫌な父親のもとに残り、さらにはエヴァンが色々関わったおかげで、彼女は幸せの絶頂からどん底まで、様々な人生を転々とさせられることにもなったのだから・・・。
 自分と関わらず、母親の元で愛情あふれる幸せな未来を歩んでくれる事が、エヴァンが最終的に選んだ未来でした。

 最後のエヴァンの試みは成功し、エヴァンとケイシーは全く接点のない未来、それぞれがそれぞれに、それなりの幸せをつかんだ未来につながりました。
 結果、ある意味で、それが一番の幸せかもしれない・・・とは思うものの、それが本当に彼らにとって幸せなのか・・・という、切ない結末になっています。
 ラストシーン、別々の人生を歩んできたエヴァンとケイシーが都会の真ん中ですれ違い、お互いに何かを感じて時間差で互いを振り返る(時間差があるので、結局お互いの背中しか見られなかった)シーンは、「再び結ばれる可能性のあった一瞬が、うまく紡げないために永遠に離れてしまった」という結末を表すのか、それとも深読みする方向なのか・・・。
 不覚にも、エンドクレジット中に色々考えさせられてしまいました(^^;)。

 それにしても、普通に生活していれば、誰しも「あのとき、あんな一言を言わなければ!」とか、「あの時に戻りたい!」と思う時があるでしょう。
 私にも、色々ありますし(--;)。
 しかし、「今」という時間は、様々な「しまった!」の積み重ねで成り立っている事を考えると、私なんかは、「今」がそんなに悪いものではありませんから、あながち悪い選択ではなかった・・・のかもしれません。
 (いくつかの事に関しては、知り合い各位から「んなわきゃねーだろっ!」という激しいツッコミが来るかもしれませんケド・・・)

 まあ、人間、過去を振り返るより、「未来を見て歩いて行くのがふさわしい生き方でしょ!」と、この映画の切ない結末から、何となくそんな事を考えさせられたりしてしまいました。
 ま、今回の映画、満足度をつけるなら、85%という所でしょうか?

 最後に、どうでもいいことですが・・・。
 ロリコン趣味を持つケイシーの父親役を演じていたのは、エリック・ストルツという俳優です。
 彼は「THE FLY 2」というホラーで、ハエの遺伝子を体内に取り込んでいる青年を演じ、「メンフィス・ベル」という戦争映画で、アイリッシュ系の赤毛が印象的な無線士ダニーを演じた、演技派俳優でもあります。

 何でわざわざこんなことを書くかと言うと、実は彼は「バック・トゥー・ザ・フューチャー」の主演を降ろされていたんですね・・・(で、演技に関しては下手だったマイケル・J・フォックスが起用されている・・・)。
 んで、今作では変態親父役と、タイムトラベルものの物語との相性が、ちょっと悪すぎる気がしなくもない感じがするんですね、個人的に(^^;)。

 ついでに、「メンフィス・ベル」で彼と共演した、機長デニス役のマシュー・モーディーンは、トム・クルーズ主演で話題をさらった「トップガン」の主演をあえて断ったという豪傑です(何で二人とも、日本ではそんなに注目されないんだろう・・・)。
23:50:00 | yo-ta | | TrackBacks
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