Archive for 12 January 2007
12 January
両生類の凶悪な伝染病、「カエルツボカビ症」が日本に侵入。WWFから「緊急事態宣言」。
以前話題にしたチャリンコのパーツカスタムですが、年末年始でゴタゴタするシーズンなのに、いつそんな事をやる時間が取れたのか、と聞かれたので、嘘偽りなく即答しました。「クリスマスの3連休」
・・・ん?何でみんな、そんなに哀れっぽい目でこっちを見るの?
では本題です。
エコな皆様の中で、外来種の移入問題が話題になるとき、必ず話に上がるのが、「生物種」そのものの持ち込みとともに、付随して「未知の感染症」が国内にもたらされ、抗体や対抗手段を持たない在来生物に対し、壊滅的な被害が生じる可能性です。
これは、ヒトで言えば旅行中に国外で伝染病に感染したことを知らずに帰国し、その後国内で発症→周辺に伝播するケースと置き換えれば、切実な問題であることがお分かりいただけると思われます。
そして昨年末、アジア圏では過去に症例が確認されていなかった、両生類に対する致死性が非常に高い感染症が、日本国内で確認されてしまったそうです。
日本の両生類に危機 カエルツボカビ症が国内で初確認(WWF Japan)
カエルツボカビ症侵入緊急事態宣言(WWF Japan)
「カエルツボカビ症」とは、今まで聞いたことがなかった病気(まあ、今までアジア圏では野生下、飼育下を含めて、全く症例が確認されていなかったのだから当然)ですが、リンク先を見ると、どうやら皮膚に寄生する真菌類がもたらす病気のようです。
ヒトで言えば、「水虫」が概念的に近いと思われますが、水虫と大きく違うのは、両生類がこれに感染すると、死亡率が90%以上にもなるとともに、周辺伝搬性が恐ろしく強い、という事のようです。
・・・ヒトでいえば、エボラ出血熱レベルにヤバい病気ですね・・・(両生類にとっては)。
リンク先記事によると、国外では既にオーストラリアや中米などでは、カエル類に壊滅的被害が生じているようで、オーストラリアでは国家レベルで対処を強いられている状況のようです(つまり、税金が大量投入されてるってことですね)。
もし日本の野外にこの病原体が拡散した場合、この病原体に対する抵抗力のない国内の両生類(主にカエル類)の間に、恐らくはかなり短期間のうちに蔓延して行くでしょう。
野生動物の間に蔓延した病気の防除&根絶は、現在の技術では不可能ですから、病気の蔓延とともに、在来外来を問わず、カエル類の個体数は激減の一途を辿るでしょう。
そうなると、問題はカエル類の減少にとどまらず、国内の生態系全体に多大な影響が出るのは必至であり、対策には多大な労力と資金(主に税金)が必要とされることが予測されます。
なお、この病原体の「ツボカビ」は、今の所、魚類、爬虫類、鳥類、哺乳類には感染・発症の報告はないようです。
なんだ、それなら別に気にしなくていいじゃん、と思われた方も多いかもしれませんが、それは大きな間違いです。
カエル類をはじめとする両生類の減少により、まず想定されるのが、捕食者の減少に伴う昆虫類の増加です。
この段階でも、「たかが虫が増えるくらい」と思った方が多いかもしれません。
しかし、たかが虫とはいえ、ただの虫に止まらない、厄介な連中が同時に増加してしまうとなると、どうでしょう?
例えば、吸血性昆虫(カ、アブ、ハエなど)が増えることにより、ヒト感染症の広域媒介リスクが一気に高まります。
また、栽培害虫の増加に伴う農作物の大規模被害が想定されますし、衛生害虫の増加に伴い生鮮食品の安全管理コストが増加し、食料品価格の高騰などの弊害も考えられます。
たかがカエルの病気でも、ヒトの社会生活に多大な影響を与えかねない物であることは、理解していただけると思います。
大体、リンク先の「緊急事態宣言」の頭にある、共同署名団体の数と名前を見れば、多くの動物愛護団体、自然保護団体、専門研究機関などが同時に「緊急」と考えるほどヤバい事態が起きたと御理解いただけるのではないでしょうか?
今の所、個人レベルでできることは、「安易な気持ちで外国産の両生類の飼育に手を出さず、一度飼育を始めたからには、死骸の適切な処理に至るまで責任を持つこと」になるでしょうか。
そして、上にリンクしたWWF Japanのサイトなど、学術的に正しい情報に必ず目を通し、テレビのワイドショーなどで行われることが予測される、センセーショナリズムに走って危機感を煽ろうとする報道に踊らされないように注意する必要がありそうですね。
特に、恐らくはワイドショーで行なわれるであろう「外国産のカエル=病気持ちで危険」なんていう安易なイメージ報道で、飼育中の外来種個体を野外に放逐することは、日本特有の生態系に様々な悪影響を与えることが想定されますから、絶対に避けてください(そうでなくても、自然界は"蝶々効果"だらけなんだから)。
さて私は・・・。
上の内容に加えて、野外に出たときは、両生類が大量へい死している状況がないかどうか、注意することにしましょう・・・。
情報追加
麻布大学のホームページに、カエルツボカビ症の基礎知識、感染経路や発病(感染)個体の扱いについて、わかりやすくまとめたPDFファイルがありましたので、情報を追加します。
ツボカビ症に関する解説書
「ツボカビに関するQ&A 一般のカエル飼育者の方々に」
現在、外国産両生類を飼育されている方は、ぜひ御一読ください。
また、麻布大学のホームページでも強調されていますが、
野外にツボカビが侵淫した場合、
1)根絶不可能。
2)カエルの絶滅からひいては他の動物の絶滅の連鎖を引き起こす恐れがある。
飼育下であれば、疾病コントロールは可能。
1)非侵襲的診断法がある。(PCR)
2)消毒法がある。
3)治療法がある。
人間には感染しない。
飼育放棄する必要はない。
そして何より、
ツボカビの野外への拡散絶対阻止
が、現在、最も求められることです。
発病個体、感染が疑われる個体の放逐だけでなく、死亡した個体の死骸を庭先に埋めるのも、感染個体が触れた水を排水口に流すのも、野外拡散につながる危険な行為であることに注意してください。
21:13:00 |
yo-ta |
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