Archive for 25 November 2005

25 November

『下流社会』を読んで。・・・私の感想は、「ふ〜ん・・・だから何?」

 今朝、一番にフロアに来た人たちは、床にマグロが転がっている・・・つまり、昨夜飲みすぎた人たちが、死んだように寝ている姿を見たそうです。

 私が出社した時は、その人たちは「ゾンビ(つまり二日酔い)」になってフラフラ歩いていました・・・。
 ああ、なんてホラーな職場なのか・・・。

 ってか、いくら昨夜が某上司の「執行役員昇進に伴う栄転祝い」だったからって、翌日を考えずに飲みすぎだ!>ゾンビ達。

 では、本題です。
 最近話題になっているというこの本、私も読んでみました。



下流社会 新たな階層集団の出現


 しかし・・・何というか、読後に何の目新しい視点も価値観も提供されず、「ふ〜ん・・・だから何?」という、思いっきり中途半端な感じが残ったのは、何というべきか・・・。

 基本的に、この書の中では、「日本=首都圏」で完結しているようで、首都圏近郊の数百〜2,000人程度に対するアンケート結果だけで、「今の日本の社会はこんなに変容しているかもしれない」という仮説(筆者自身がそう言ってる)を述べている本です。
 で、筆者自身が認めるとおり、母集団が首都圏周辺在住者に偏向している上に、サンプル数が少なすぎるアンケートから求めた解析で、日本の社会構造全体の傾向を捉える、という試みは、乱暴と言わざるを得ません(というか、私は自分で前提が甘いと認めてるなら、本の内容の説得力がゼロじゃん、と言いたいですが)。
 しかも、調査手法にはWeb調査による部分がかなり多くを占めているようであり、こんな前提条件では、趣味の傾向が「パソコン/インターネット」に偏向するのは当然の結果だと誰もが予想できるはずですが、それを「下流」の特異的傾向と捉えるのは、データ処理の中立性に欠けると受け取られてもおかしくないでしょう。

 さらに、筆者のイメージする社会構造は、「首都圏在住者=上流」、「地方都市在住者=中流〜下流」という前提があるようですが、これもあまりに暴論であると言わざるを得ませんよね・・・。
 地方都市には、その地方の歴史と風土に由来する価値観が存在し、それは東京における価値観とはまた異なる次元で評価されるべきことだと私は思います。

 それに、アンケート調査をもとにした書というと、中立的な結果が得られているように見えますが、母集団の選定や質問構成から「統計のマジック」に至るまでをごくわずかに操作しただけで、簡単に自分の望む結論を誘導することが可能なことは、高校時代に数学の「確立統計」を学んだ方なら誰でもわかるでしょう。
 シンクタンクとはいえ民間企業ですから、研究者的正確性を持たせた統計調査を行うのは困難(クライアントの意向を反映させるのが前提)なのは当然ですから、データ解析結果を提示する場合には、集計(加工)後のグラフや数値表を出すだけでなく、少なくとも、生データや調査票の原票(アンケートの質問項目すベて)を明らかにしておかないと、「記述内容に対し、他者に判断を委ねるための情報」が不足しており、読み手に記述内容を判断してもらう書としては不適切です(←ここ、断言しておきます)。

 しかも、そうした「読み手が中立的思考で物事を考えるためのアシスト」が無い結果、この書に対する評価は盲従的な高評価と排斥的な低評価に二分され、中立的な立場からの考察がほとんどされないという「感情的な水掛け論」の状況が生まれていると思います。
 実際、私が見た書評の限りでは、この書を高く評価する人たちは、批判的な意見をもつ人たちを「下流の人間が、気まま勝手に生きることを否定されて必死になっている」という感情的な評価に走り、批判的な立場の人からは、肯定的評価に対し「若者世代を差別的に見下した見解を正当化するために、もっともらしいデータを引用もしくは加工しているだけの内容に盲従できる見識を疑う」という感情的な評価に走る傾向があるように受け取れます(それにしても、どちらも極端な意見ですな ^^;)。

 こんな意見の応酬が、進歩的討論でないことは、誰の目にも明らかでしょう。
 この状況からは、「世間を煽って本を売る」という目的は達成できても、「本書に示した内容をもとに、今後の社会構造のあり方を真剣に議論する」という方向の目標達成には程遠い結果になっていると言わざるを得ません。
 このあたりを、筆者はどう捉えているのでしょうか?

 とりあえず、本書に対しては、ここまで書いてきた内容が是正されない限り、私の中では、最初に述べた感想が変わることはありません(←ここも断言しておきます)。

 まあ、私が唯一、共感できたのは、若者がフリーターやニートに陥る心理の部分です・・・が、これとて、既に他の書物などで何度も語られていることですから、特に目新しいものでも、長々引っ張れる話題でもなかったですし・・・。
 「ここから新たな階層社会が生まれようとしている」と言われたって、所詮は筆者の仮定の話でしかないし・・・。

 何というか、結局、「だから何?」という読後感しか残りませんでした。

 というか、この本って結局、筆者の「仮説」を表現したものですから、考察的な部分は文末を全て「かもしれない」に脳内変換しないと、筆者の正しい見解として読めないんですよね?
 ・・・めっちゃ読みづらいって(^^;)。

 では、[more...]前文章の最後に。
 「自分らしさを探す」ことを「何もしない」ことの言い訳(口実)にしてフリーター生活に逃げていては、最後まで「何もできない人間にしかなれない」という点には大いに賛同します。

 ただし、「派遣社員」を同じカテゴリーに押し込むことは反対です。
 派遣社員の皆様の中には、結婚退職し、育児がある程度落ち着いた主婦層の皆様や、一度定職から身を引いた人が、再び仕事に出る手段としてこの制度を使っている場合が少なくありません(私のまわりにいる派遣社員の皆様には、正社員転換試験にチャレンジする人も多いです)。
 だから、「派遣だから腰かけ感覚であり、進歩性がない」というのは大きな間違いで、彼ら・彼女らは「正社員」に近しい「進歩的意識」を持っている人たちだと考えるべきだと思います。

 (そのほか、まだまだ続きますが、我ながらどうでもいい内容を含みます。興味のある皆様は[more...]以降をどうぞ)
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22:23:00 | yo-ta | | TrackBacks