Complete text -- "珍しく、映画評なんぞやってみます。"

28 December

珍しく、映画評なんぞやってみます。

 昨夜、帰宅したら、深夜に映画をやっていました(そんな時間帯ですから、まず、万人にお勧めできる作品には遠い物が放映されているわけですが・・・)。
 しばらくは、忙しくて劇場で映画を見る時間もなかったため、超久々の映画鑑賞となりました。今回は、ちょっと今までとは趣向を変えて、その映画の感想を書きたいと思います。

映画題名:ジーパーズ・クリーパーズ
  ※日本語に訳すと、「ああ恐ろしや」という感じの意味の慣用句だとか。

あらすじ:
 23年に一度、大量の行方不明者が出る、という怪談のある田舎町を車で帰省旅行中、大学生の姉弟は、謎のトラックから執拗な煽りを受ける。
 何とかそれをかわした後、そのトラックの運転手(?)が、教会裏の穴(コルゲートパイプの縦穴)に、袋に包んだ人の体らしいものを投込んでいる所を目撃する。
 そして、それを見てしまったため、姉弟に想像を絶する恐怖が訪れる。

感想(ネタばれなし):
 昨夜、忘年会から帰ったら、TBS系列でやっていた、一応、ホラー映画です。
 年齢がばれるかもしれませんが、私が物心ついた頃、世間はホラー映画・・・というより、血飛沫飛びまくりぃの、スプラッター映画が全盛期でした。
 「13日の金曜日」のジェイソン君や、「エルム街の悪夢」のフレディさんや、「バタリアン」のオバンバ様が元気だった頃、といえばおわかり頂けるでしょう。
 まあ、私はその後、大学のゼミで、様々な動物の解剖実習を行い、ナマで動物の内臓や筋肉や骨格を見る(ついでに、素手でそれに触る)機会に恵まれて(?)しまった結果、「血飛沫ぴゅーっ!」系の作品は、見てもほとんど怖くなくなってしまったわけですが。

 それはさておき、そういうホラー系に免疫が出来た奴の眼から見たこの作品は・・・。

 まず、この作品に送る言葉は、「竜頭蛇尾」って所です。面白かったのは、最初の30分だけでしょうか?この部分だけで引き込まれて、翌日は早朝出発だというのに、未明まで見続けたことを、確実に後悔しました。
 とにかく、冒頭の姉弟のバカバカしいけれど、実際の姉弟ならやっていそうな口喧嘩のテンポや、正体の見えない運転手の描写から来る恐怖感は、なかなか良いと思いました。
 謎のトラックに煽られるシーンが、S.スピルバーグ監督の出世作「激突」のパロディにしか見えないことは、まあ、置いておくとして。

 しかし、得体の知れないものが、心にじわじわ染み込んでくるような恐怖を感じさせるミステリアスな雰囲気は、ここまででした。
 後半は全然別の映画になってしまい、もう、ツッコミどころ満載、というか、単純にバカバカしい展開になってしまい、ただ閉口・・・というより、口をあんぐり開けてポカーンとしてしまいました。
 一体、いつ製作の映画なんだ、と思って調べて見たら、2001年・・・。おいおい、こんな時代に、こんなものを大真面目に作ったって、本気か?

 これでも、全米No.1のヒットを飛ばした恐怖映画という宣伝文句でしたから・・・。
 ううむ、アメリカと日本では、恐怖のツボが異なるようです。

(ネタばれありは、[more]以降に書きます。↓をクリック)

 ネタバレ編です。
 一応、ホラー作品なので、結構、グロい表現が感想にも出てきますので、ご注意ください。

 とにかくこの作品、途中まではいい感じでミステリーな雰囲気が漂っていたのに、姉弟の通報で駆けつけたパトカーが殺人鬼に襲われた後からは、全くダメのダメダメな映画に早変わりです。
 私は、本気で滑りまくって寒いコメディー映画だと思ったくらいで・・・。

 なお、謎のトラックの運転手が人の死体らしき物を投げ込んでいた穴には、その後、無駄な好奇心から覗き込んだ弟が落っこちるという、すごい展開が待っています。一応、その穴は古い教会の地下室で、そこには剥製にされたような人の死体が、所狭しと並べられていました。
 ・・・ですが、この死体の造形がちゃちで、遊園地のお化け屋敷にあるマネキン人形にしか見えません。この段階で、苦笑一つ。

 そして、教会の地下で人の剥製を作っていた殺人鬼の正体は、「ジーパーズ・クリーパーズ」と呼ばれる、背中にコウモリのような羽のある怪物(人間じゃない:笑)。おいおい、怪物かよ!怪物じみた人間でなく?
 と、いうわけで、この映画の後半は、

 『奴は移動速度が車より速い』 →なぜ?→ 『だって怪物だもん』
 『奴には銃が効かない、車で轢き潰しても復活する』 →なぜ?→ 『だって怪物だもん』
 『奴はいつも恐ろしく正確に、姉弟の居場所を突き止める』 →なぜ?→ 『だって怪物だもん』

 というご都合主義をベースに突っ走るわけです。
 前半の、ミステリー系の展開で最後まで突っ走る、と思っていた作品に、突然、怪物登場、ご都合主義の連発、となってしまうと、もう、単なる馬鹿映画の世界です。
 怪物に追われる姉弟の姿は、お化け屋敷の着ぐるみと人間の追いかけっこにしか見えません。

 それに、途中でいきなり出てきた超能力者(?)のおばさんは、予知夢によって姉弟の未来がどうなるかわかっていたはずですが、その未来を回避する方ではなく、逆に虎口に飛び込ませる方向に導いたというバカっぷりを披露しています。
 そして、怪物は行く先々で姉弟を驚かせているだけで、まともに始末しようとはしていません。
 しかも、コイツは羽があるのに、移動手段として、わざわざトラックを運転してくるという、律儀な奴でもあります(ラスト近く、人に追いつめられたら羽で飛んで逃亡するのに、登場する時は必ず車利用:笑)。

 こういう作品を見ると、モンスター、クリーチャ系のホラーが下火になった理由も良くわかります。
 とにかく、見ていて、単純にバカバカしい。よくぞこんな物を、2001年に作ったなあ・・・。

 ここから先、グロい表現が出てきますので、注意・・・。
 この映画は、一応、何の解決も救いもないまま、怪物に弟がさらわれて終わりです(ここでは怪物は飛んで逃げてゆく。トラックは現場放置:笑)。
 その後、霊能者のウジウジした自己否定のセリフを聞かされながらスタッフロールになりますが、その最後に、おまけ的に映像が入っています。
 これが、劇中で怪物にさらわれた弟の剥製な訳ですが・・・造形が相変わらずマネキンな上に、頭部(両目の部分が、後頭部まで突き抜けた拳大の穴になっている)はどうもCGのようですが、書き割りのようにペラペラで、厚さを全く感じさせないため、これも苦笑しか漏れません。
 いやはや、全く、何なんだか、この作品は。

 こんな作品でも、続編が作られているそうです。
 やはり、アメリカと日本では、恐怖のツボが違うとしか思えません・・・。
 (だから、日本では古典的なホラーだった『呪怨』が、アメリカでは「新しいホラー」として受けたのだろうか?)
22:34:22 | yo-ta | | TrackBacks
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