Complete text -- "クマ出没騒動、多いですねぇ。"

14 October

クマ出没騒動、多いですねぇ。

 最近、クマ出没騒動、多いですねぇ(^^;)。紅葉ハイキングシーズンを目前に、例年にない「クマ・ラッシュ」。
 うむむ・・・低山ハイカーの私には、すごいカウンターパンチだ。

 私がよく行く奥多摩でも、9月からこちらだけで、すでに数件のクマとの遭遇報告があったようで、これからしばらくの間は、いつにも増して熊鈴が手放せなくなりそうです。
 ・・・けれど、一回ぐらい、野生個体をナマで見てみたいとも思ってしまうんですよね、私の場合(^^;)。(実は、今年はチャンス到来?)
 まあ、私が奥多摩の山に登る時は、「私の方が、クマのテリトリーに侵入している」わけですから、実際に出会ったとしても、誰にも文句は言えません(完全自己責任:笑)。

 さて、今年、こんなにクマ騒動が多くなった理由はいくつも考えられますが、専門家の間では、特にどの要因が悪い、というわけではなく、それぞれが複雑に絡み合った結果だという見解のようです。
 長期的な要因としては、里山地域の過疎化による荒廃から、ナラ類(ドングリをつける木)の勢いが衰退し、枯死木数の増化から来る慢性的な餌不足が考えられるそうです。
 この里山地域の荒廃は、その他多くの身近な生物の生存も脅かしていますが、だからといって、現代の日本の社会では、昔ながらの生活では十分な生計が立てられないため、なかなか対策は進んでいません。
 そして短期的な要因としては、今年の猛暑と台風ラッシュのため、木々の実が熟す前に落ちてしまった事が、餌不足に拍車をかけているようです。

 クマほどの体格を持った動物が生きるには、相当な量の餌が必要なことは、想像に難くないと思います。しかし、山に餌がないから、仕方なく餌を求めて人里に迷い込み、耕作地を荒らし始め、そして、運悪く人と遭遇してしまう事例が増えてくる。
 本州にいるクマ(ツキノワグマ)は、人間より小さな体をしていますから、体格で自分に勝る(=自然界においては、「自分より強い」ことを表す)「ヒト」という生物にばったり遭遇した時の恐怖は、人がクマを見たときを上回るはずです。

 そして、本来は臆病でおとなしいはずの彼らが、ある個体は子を守ろうと必死になって、ある個体は追いまわされたりしてやむなくヒトに立ち向かい、接触被害が発生してしまう・・・。

 何だかクマ達がかわいそうになってきますね。
 (だからって餌付けは絶対駄目!野生動物は野生の姿にあることが一番、生命としての尊厳が守られているんですからね!)

 ところで、こうしたクマ騒動の顛末を見ていると、「射殺された」という結末になっている事が多いですね・・・。

 最近では、各自治体ともクマ対策の基本姿勢は「学習放獣(※1)」をあげていますが、生きたまま再び放すことに地元の理解を得るのは難しい、という話も良く聞きます。
 また、集落付近では、そこで捕獲されるのが2回目以降で、人身被害の恐れなど緊急性が高い個体の場合は補殺することもやむをえない、という判断もある(まあ、これは仕方がないですね)ことを根拠に、「ズドン」とやってしまうことが多いようです。

 しかし、確実に「2回目以降の出没で、危険度が高い」という判断ができない場合が多いのに、射殺してしまうのはどうかなあ、と私は思います。
 以前、人里に出てきたクマが追いまわされ、射殺されるまでの経緯(わが郷里、福井県の事例)をニュース映像で見ました。その時現れたクマは、その年に生まれた小熊と見られていて、恐らく、人里に来るのも初めてと考えられていました。
 では、セオリーどおり学習放獣されたのか、というと、実際にとられた対策は、警察、猟友会が大勢で追いまわして追い込み、もう抵抗する気力もなさそうなクマに実弾を数発撃ち込むという結果に・・・。
 福井県は、学習放獣を基本とする対策指針を持っている(!)のに、初弾から実弾、しかも傷痕からみてスラグ弾(※2)を発射しているのは、殺す事しか考えていない証拠でしょう(学習放獣前提なら、麻酔弾を使うはず)。
 私の目には、はっきり言って、この映像はただの「虐殺」と映りました。モアベターな解決法があったはずなのに・・・。

 とにかく、人里で追い回され、ここは危険な場所だ、と学習した個体を殺してしまうのでは、次世代にその経験が受け継がれるチャンスも失われます。これではいつまでも、同じことを繰り返すだけだと思うんですけどね・・・。

 それよりも、私はクマが出た、という通報があっただけで、銃を持った人間が大勢、近所をウロウロしはじめるほうが、クマがいるより何倍も危険に思います(マジに)。


(※1)
 捕獲されたクマを唐辛子スプレーや爆竹で脅かし、人里に近付くとひどい目にあう、という体験をさせた後、人里から遠く離れた場所に放すやり方。確か、広島県が最初に行い、成果をあげていたと思う。

(※2)
 猟銃用の特殊弾。猟銃というと散弾を思い浮かべる方も多いと思いますが、スラグ弾は散弾の薬きょうの先端に、単弾を装着した感じの弾丸です。狩猟用の散弾は、細かい弾を広範にばらまき、二次的に環境や生物に鉛汚染を引き起こすため、近年は単弾であるスラグ弾を使用することが推奨されています。
 なお、スラグ弾の破壊力は強く、ツキノワグマなら1発で行動不能にさせる事も可能です。人間に当ったらどうなるかは、説明するまでもないですね。
23:35:26 | yo-ta | | TrackBacks
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